コラム

同行援護でかなえる安心・効率的な買い物サポート実践ガイド 準備、ルート設計、情報提供と意思決定支援、決済・プライバシー、振り返り

買い物前の事前準備は何をどこまで決めておくべきか?

以下は、同行援護を活用した買い物サポートにおける「事前準備で何をどこまで決めておくべきか」を、実務で役立つレベルまで具体化した内容です。

結論としては、①安全と権利保護に直結することは「決め切る」、②選択の幅があるほど本人の満足度が上がる領域は「範囲を決めて現場で最終判断」、③未知や変動が大きい事柄は「代替案と優先順位だけ明確化して柔軟に対処」という三層で準備するのが効率的かつ制度適合的です。

根拠は後半にまとめます。

1) 決め切るべきこと(原則、事前に確定)
– 目的と優先順位
– 何のための買い物か(例 今週の食材の補充、冠婚葬祭の服、消耗品のまとめ買い)
– 必須購入品と、あれば良い品を区別し、優先順を番号付け
– 予算と決済方法
– 全体の上限、各品目の目安価格帯、セール時の許容範囲(例 ±10%まで)
– 支払い手段(現金、IC、クレジット、ポイント)と使用上の留意事項(暗証番号の取り扱い、ポイント併用可否)
– 時間枠と体力配分
– 利用枠内での移動・選定・会計・休憩・帰宅を逆算した滞在時間
– 休憩のタイミングと場所(ベンチ、イートイン)
– 店舗とルート
– 利用店舗(候補1→候補2)、行き帰りの経路、集合・解散場所、トイレ位置
– 混雑回避の時間帯(開店直後など)
– 持ち物と搬送方法
– エコバッグ数、保冷バッグ・保冷剤、折りたたみカート、雨具
– 持ち帰り重量上限、宅配の利用可否
– 安全面・緊急時対応
– 体調変化時のサインと対応手順、薬の携行、緊急連絡先
– 手引き方法の確認(階段・エスカレーター・狭所・自動ドアの合図)

2) 範囲を決め、現場で最終判断すること
– 商品仕様の許容範囲
– 食品 容量(例 500〜700g)、産地の優先順位、添加物の避けたい条件、アレルギー、賞味期限の下限(最低◯日以上)
– 日用品 詰め替え互換の型番、香りの強さの許容、肌刺激の懸念成分
– 衣料 サイズの幅(M〜L)、素材(綿50%以上など)、色の候補順、予算内のデザインの幅
– 家電 必須機能(例 音声ガイド対応)、型番候補、店頭在庫なければ取り寄せの可否
– 代替案のルール
– 第1候補が在庫切れの場合の切り替え基準(ブランド→容量→価格の順)
– セール品やリニューアル品への変更の条件
– 試着・試食・展示確認の扱い
– 試着可能時間の上限、写真・触知による確認の手順、店員への依頼範囲

3) 現場で柔軟に判断する前提で、事前に枠だけ決めること
– 商品比較の観点と説明フレーム
– 支援者が口頭説明する順序を統一(例 価格→容量→単価→原産地→成分→期限→棚位置→在庫色)
– 3点比較を上限とし、比較に要する時間目安を設定
– コミュニケーションと役割分担
– 声かけの合図(停止・回避・接近・危険)、読み上げのスピード、復唱ルール
– レジでの動線役割(トレーへの現金置き、袋詰めの順番、レシートと釣り銭の確認担当)
– 店員・第三者対応
– 説明カードや一言メモ(視覚障害があり情報提供をお願いします等)を使うか否か
– 勧誘・試供品の断り方の定型句

4) 情報収集・下準備(前日〜当日朝)
– 事前リサーチ
– Webチラシやアプリ(店舗公式、価格比較)で価格帯と棚割の仮情報を収集
– 必要なら店舗へ電話で在庫・試着室・バリアフリー動線・取り置き可否を確認
– データのアクセシビリティ
– 買い物リストを点字・拡大・音声(スマホのメモ、読み上げ)で共有
– 型番・JANコードの控え、OCR/バーコード読み取りアプリ(Seeing AI等)準備
– 書類・カード類
– 会員証・ポイントカード、クーポンの有効期限確認
– 返品・交換ポリシーの要点メモ(日数、レシート要否、タグ保持)

5) 当日の運用フロー(事前準備の活かし方)
– 入店前ブリーフィング(3分)
– 目的・優先3品・時間枠・支払い方法・合図を再確認
– 店内の回り方
– 優先品から、動線短縮の順に、比較は最大3点、都度メモで購入可否を確定
– 会計
– レジ前で支払い手順の声かけ、レシートの読み上げ(合計・単価の抜き取り)と釣銭の口頭確認
– 退出後のクイック振り返り(3分)
– 未購入品と代替案の次回持ち越し、気づきと改善点をメモ

6) よくある品目別の決め方例
– 食料品(生鮮)
– 決め切る 必要量、予算、避けたい産地・品種、期限の下限
– 範囲で調整 鮮度の指標(色・硬さ・匂いの情報化)、サイズ、特売の置き換え
– 衣料
– 決め切る 用途(仕事・冠婚葬祭)、サイズ帯、上限予算、色のNG
– 範囲 素材感、着心地、縫製の荒さ、裾上げの要否と日数
– 家電
– 決め切る 設置スペース、対応規格、音声・触知による操作性、上限予算
– 範囲 メーカー選好、延長保証、納期・設置日の調整

7) 記録と次回改善
– 支援記録に、所要時間、在庫状況、比較に要した情報、本人の満足度、疲労度を簡潔に残す
– 次回は「比較点の絞り込み」「店舗の変更」「取り置きの活用」などに反映

どこまで決めるかの線引き(原理)
– 本人の自己決定を侵害しないことを最優先に、生命・財産・時間の損失リスクが高い要素(安全、予算、決済、動線)は事前に決め切ります。

– 満足度を左右する審美性・触感・フィット感は、選択肢の幅を定義したうえで現場で最終決定。

– 市況や在庫に左右される事項は代替基準と優先順位だけ固め、機動的に切り替えます。

根拠(制度・指針・実務知)
– 制度の趣旨
– 同行援護は、視覚障害のある人の外出における移動の援護、代読・代筆、情報提供等を行い、本人の自立的な社会参加を支えるサービスです。

支援者は「安全の確保と情報保障」を担い、最終的な選択・決定は本人が行うことが基本です。

この役割分担は、障害者総合支援法に基づく指定基準および厚生労働省の研修テキスト等で繰り返し示されています。

– 自己決定と合理的配慮
– 障害者差別解消法に基づく合理的配慮の考え方では、情報へのアクセスを確保し本人の意思決定を支える調整が求められます。

事前に仕様や代替基準を言語化し、店頭で必要情報を提示・読み上げるのは合理的配慮の具体です。

– 安全配慮義務とガイド技術
– 視覚障害者の手引き法(階段・エスカレーター・狭所・ドアの通過等)は、国内のガイドラインやリハビリテーション分野の標準で整理されており、事故予防のための合図の統一と事前確認が推奨されます。

移動に関わる事項は「決め切る」対象です。

– 金銭管理・トラブル予防
– 消費者トラブルの典型として、価格の取り違え、過量購入、返品不可条件の見落とし、決済時の取り扱いミスが挙げられます。

これらは事前の予算設定、比較点の明確化、レシート確認ルールの設定で大幅に減少します(各地の消費生活センター事例集等)。

– 支援計画とPDCA
– サービス等利用計画・個別支援計画では、目標設定、手段、評価・見直しが基本。

買い物支援も同様に、事前準備(Plan)→実施(Do)→振り返り(Check)→改善(Act)を回すことが、満足度と効率の両立に資します。

– 個人情報・プライバシー
– 決済情報や健康情報(アレルギー・服薬)は機微情報に当たり、取り扱い最小化と口頭配慮(声量・場所選び)の必要性が各種指針で示されています。

事前に共有範囲を決めることは権利保護の観点から妥当です。

– 同行援護の範囲と限界
– 同行援護は代理購入や代理決定を目的とせず、本人の選択を可能にするための視覚的情報提供・代読/代筆・移動支援が中核。

したがって「支援者が決めるべき領域」を限定し、「本人が決めるための材料を整える」準備を重視するのが制度適合的です。

現場での工夫(実践的ヒント)
– 説明テンプレートを用意 価格→容量→単価→原産地/素材→成分→期限→特徴→メリット/デメリット→在庫色/サイズ→価格差
– 比較は3点・3分を上限の目安にし、時間超過時は「今決める/持ち越す」を確認
– 取り置きやネット注文+店舗受け取りを併用し、現地の選択負荷を下げる
– 「迷った時はこうする」ルール(例 優先順位が低いものは次回、セールでも基準を外れるものは見送り)
– 支給量・時間管理の観点から、移動・選定・会計のタイムスタンプを軽く控える

まとめ
– 決め切るべきは、安全、予算、時間枠、店舗・ルート、必須条件。

– 範囲を定め現場判断に委ねるのは、品質・デザイン・触感など満足度に関わる領域。

– 代替案と優先順位を明確にし、情報提供の方法と合図を標準化する。

– 根拠は、同行援護の制度趣旨(情報保障と自己決定の尊重)、合理的配慮、安全配慮義務、消費者トラブル予防、支援計画のPDCAにあります。

この三層の設計で事前準備を行うと、限られた支給時間でも満足度が高く、トラブルの少ない買い物支援が実現します。

店舗選びと移動ルートはどう設計すれば負担とリスクを減らせるのか?

以下は、同行援護を活用した買い物支援で「店舗選び」と「移動ルート」をどう設計すれば負担とリスクを最小化できるかを、実務の流れに沿って整理したものです。

最後に根拠・参照情報もまとめています。

出発前の前提整理(個別化の土台)

– 利用者の歩行特性・ニーズを確認
– 歩行スピード、歩数・距離の許容、段差や人混みへの耐性、エスカレーター可否、エレベーター必須か、左・右のどちら側支持が安心か、片手が荷物で塞がることの影響など。

– 感覚過敏(音・匂い・強照明)や疲労しやすい時間帯、低血糖・脱水リスク。

– 買い物の目的・優先順位
– 商品カテゴリーの優先順位、冷蔵品の購入有無(滞在時間・保冷対応に影響)、現金かキャッシュレスか、試着・サイズ確認の必要有無。

– 同行援護の支給量・時間枠
– 限られた時間内で達成するため、移動・滞在の配分を先に決め、無理のない設計に。

店舗選びの基本設計(負担とリスクを下げる選び方)

– 立地と到達容易性
– 自宅から信号の少ない経路で行ける店舗、点字ブロックや音響信号機が連続しているエリアを優先。

– 公共交通の乗り換えが少ない、または駅直結・バス停至近で雨天でも濡れにくい動線。

– 物理的バリアフリーの水準
– 出入口が自動ドア、段差解消、滑りにくい床、通路幅が広い(少なくとも90cm以上、できれば120cm以上)。

– エレベーターが見つけやすい位置にある、トイレ・ベンチの配置が明確。

– 店舗内の認知負荷を下げる要素
– レイアウトが一貫しており、通路が直線的で回遊性が高い店舗(島陳列が少ない、突き出し什器が少ない)。

– BGMが静かで、館内放送が過度に多くない。

惣菜・ベーカリーの油や水滴で床が滑りやすくない。

– 混雑の平準化が可能か
– 平日午前など混雑ピークを避けられるか、開店直後は補充カートが多い場合もあるため店舗ごとの最適時間を把握。

– スタッフの協力性・サービス
– サービスカウンターに「案内依頼」が可能か、売り場案内・在庫照会・取り置き対応の可否。

事前連絡でのサポートが通りやすい店舗は負担を大きく減らす。

– 支払い・持ち帰りの負担軽減
– セルフレジしかない店舗は避けるか、スタッフレジがある時間帯に行く。

配送サービスがある、または近距離で台車・カートを出口まで持ち出せる運用があると安全。

– 商品特性との相性
– 定番商品の配置が固定である(毎回探し直しが要らない)。

陳列棚の高さが適切(目線〜胸の高さ中心)で上段・下段の取り出しが少ない。

移動ルート設計(安全性×効率の両立)

– 基本方針
– 交差点の数・難易度(多車線、右折車の多さ、見通し、交通量)と決定ポイント(曲がり角)の数を減らす。

– 信号はできるだけ音響信号機のある横断歩道を選び、なければ交通量が少なく見通しのよい交差点に迂回。

– 地形・環境の観点
– 路面の連続性(工事・仮歩道の有無)、傾斜・段差、タイル等の滑りやすさ、屋根の有無(雨天時の安全)。

– 日射・強風の影響が少ない道、冬季は凍結しにくい道。

– 参照情報の活用
– 事前にストリートビューで段差・狭さ・工事痕跡を確認。

自治体や警察の音響信号機設置情報、鉄道・商業施設のバリアフリーマップを参照。

– 同行援護前に下見(ルートリハーサル)して、危険箇所の代替動線を準備。

– 立体交差・施設内動線
– 駅や商業施設は「最も広い動線+エレベーター中心」のルートを核に。

エスカレーターは避ける、やむを得ず使うなら上り下りの前で一旦停止し段差認識とタイミングを同行援護者が主導。

– 休憩・回復ポイント
– ベンチ、トイレ、自販機や給水ポイントを事前にマーキング。

長距離の場合は30〜40分ごとに短い休憩を計画。

– 天候別の代替案
– 雨天・猛暑・積雪時の屋内連絡ルート(駅ビル経由、アーケード商店街など)を平時から習熟。

公共交通遅延時の別ルートや店舗変更も準備。

当日の運用(負担軽減の実際)

– 情報提示の最適化
– 「次の動作」を短文で先読み案内(例 3メートル先で右、すぐ横断)。

同時に複数の指示を与えない。

重要情報は反復して確認。

– ポジショニングとガイド技術
– 原則として利用者の半歩前を歩くガイドポジション。

狭所・ドア・段差ではペースダウンと声掛け、「今から段差」「右側に人」など環境情報を迅速・具体的に。

– ドアは蝶番側を避ける、回転ドアは原則回避。

自動ドアは開閉タイミングを同行援護者が調整。

– 店内の回遊戦略
– 優先度の高い売り場から直行し、ゴールに近い売り場は最後に配置。

売り場間は「大通路→コーナー→サブ通路」の順で侵入し、突発的な平台・柱を逐次告知。

– 買い物カゴは同行援護者が保持し、片手を空ける。

重い品は最後にまとめて取り、レジまでの移動距離を短縮。

– 決済と梱包
– キャッシュレスなら事前にアプリ・カードを準備し、操作手順を確認。

レジ列は混雑が少ない列を選び、精算台での袋詰めを同行援護者が主に担当。

リスクアセスメントとコントロール

– 典型的リスクと対策
– 転倒・滑り 濡れ床・出入口マット・惣菜区の油に注意。

滑りやすい靴底は避ける。

雨天時は傘ではなくレインコートで手を空ける。

– 衝突・接触 島陳列の角、搬入カート、子ども。

曲がり角は小回りせず一旦停止して確認。

– 迷行・はぐれ 混雑時は腕組みやハンドホールドで身体的接触を維持。

見失った場合の合流地点を事前に決めておく。

– 過負荷・疲労 合計歩数・滞在時間を制限し、優先商品のみで切り上げる判断を準備。

水分・糖分の補給計画。

– 感染症・季節要因 ピーク時間帯回避、短時間滞在、マスク・手指衛生、体調不良時はオンライン併用。

– 事前合意
– 緊急時連絡先、倒れかけた場合の合図と介助方法、気分不良時の中断基準を共有。

スケジューリングと回数設計

– 混雑の谷間(平日午前10〜11時、午後2〜4時など)に合わせる。

– まとめ買いは配送を併用して持ち帰り負担を減らす。

頻度を上げて1回あたりの荷物量を減らすのも有効。

デジタル・アナログの補助

– リスト作成はカテゴリー順(青果→精肉→日配→日用品)に並べ替え、店舗レイアウトに合わせて順路化。

– 地図・ナビの音声案内アプリ、館内マップ、店舗アプリの在庫検索・取り置きを活用。

– ルートのランドマーク(音、匂い、床材変化)を記録し、次回の認知負荷を減らす。

事後の振り返り

– 所要時間、歩数、危険箇所、混雑度、疲労度を簡易ログ化。

次回は危険の多かった区間を別ルートに、または時間帯を変更。

– 店舗側にフィードバック(通路の障害物、滑りやすさ)を伝えると改善が進む場合がある。

根拠・参照と理論的裏付け
– 同行援護の基本原則
– 厚生労働省「同行援護の手引き」および「同行援護従業者養成研修テキスト」では、利用者の自己決定尊重と安全確保、環境情報の適切な提供、ルートの事前把握・下見の重要性が示されています。

これに基づき、事前評価→計画→実施→振り返りのPDCAが推奨されます。

– 歩行安全とO&M(オリエンテーション&モビリティ)
– O&M分野の研究・教本(例 Wiener, Welsh & Blasch, Foundations of Orientation and Mobility)では、決定ポイント(曲がり角・合流点)の数が増えるほど迷行リスク・認知負荷が上がること、ランドマークと滑らかな手がかり(点字ブロックや床材変化)を連鎖させたルートが学習・再現に有利であることが示されています。

– 音響信号機の活用は横断の意思決定を支援し、誤横断リスクを低減することが各自治体・警察庁資料で示されています。

– 物理的環境と事故リスク
– 視覚障害者誘導用ブロック(点字ブロック)はJIS T 9251で視認・触知の標準が定められ、連続性・適正配置が歩行安全に資するとする国交省・自治体の整備指針があります。

断続・誤誘導はリスク要因です。

– 店舗の通路幅、段差解消、床の防滑はバリアフリー整備ガイドライン(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関するガイドライン)で推奨寸法・仕様が示され、衝突・転倒リスクの低減と回遊性向上に効果があるとされています。

– 混雑回避とヒューマンファクター
– 混雑は接触事故・迷行・疲労の主要因であり、時間帯選定で事故事象が減ることは小売・施設運営の安全管理事例で広く確認されています。

静穏な音環境と一貫したレイアウトは認知負荷を低減します。

– 休憩・水分補給
– 長時間歩行における疲労・低血糖・脱水のリスクは歩行安定性と判断力を落とすことがヒューマンパフォーマンス研究で確立しており、定期的な小休止と水分補給の計画が推奨されます。

– 実務知見
– 日本ライトハウス、国立障害者リハビリテーションセンター等の外出支援・歩行訓練の資料では、下見で危険箇所の回避策を準備し、エレベーター優先・エスカレーター回避、出入口や惣菜売り場周りの滑りに注意といった具体的実務が紹介されています。

まとめ(実装の要点)
– 店舗は「到達しやすさ×レイアウトの一貫性×スタッフ協力性」で選ぶ。

– ルートは「交差点・決定点を減らす」「音響信号・点字ブロックの連続性」「屋根付き動線」重視で設計。

– 当日は「短い先読み案内」「安全優先のポジショニング」「優先順位順の回遊」で負担を軽減。

– 事前下見と事後振り返りで、次回の安全性と効率を継続的に改善。

これらを組み合わせることで、同行援護の時間内に安全かつ疲れにくい買い物支援を実現できます。

地域の歩行訓練士(O&M)や店舗との連携も加えると、さらに再現性が高まり、リスクと負担を着実に下げられます。

店内での商品情報をどう補い、本人の意思決定をどう支えるのか?

以下は、同行援護を活用した「店内での商品情報の補い方」と「本人の意思決定を支える工夫」を、実務の流れに沿って整理したものです。

後半に関連する制度・根拠もまとめます。

基本原則(前提)

– 目的は「安全な移動+情報アクセスの補完」によって、本人の自己決定を最大化すること。

– 同行援護は代替決定ではなく、情報提供・代読・代筆・移動支援が核。

選択は本人が行う。

– 情報提供は中立・網羅・簡潔を原則に、本人の関心軸(価格・味・栄養・アレルゲン・産地・環境配慮など)に合わせて最適化する。

– プライバシーと尊厳の配慮(声量、周囲への配慮、購入内容の秘匿)を徹底する。

事前準備(意思決定の質を高める土台)

– 目的の明確化 何を、どの用途で、いつまでに使うか。

今日の優先順位(必須/候補)と予算、持ち帰り重量の許容範囲。

– 関心軸の合意 価格重視か、味・栄養・アレルゲン・調理の手間・保存性・産地・ブランド・環境配慮(例 FSC、MSC、リサイクル)など、重視順を2~3個に絞る。

– 情報提示の好み 要約型が良いか逐語読みが良いか、比較はA/B/Cの3択までにするか、数値は単位価格中心か、など。

– 店の選定と回り方 静かな時間帯、売場配置(常温→惣菜→冷蔵→冷凍の順)、セルフ/係員レジの音声案内有無、会員アプリ・クーポンの事前確認。

– デジタル準備 スマホの音声読み上げ(iOS VoiceOver/Android TalkBack)、OCR/バーコード読み取り(Seeing AI、Lookout、Envision、Be My Eyes等)、デジタルチラシ(Shufoo!、トクバイ等)。

オフラインでも動くOCRを用意。

店内での「商品情報の補い方」
A. 売場・価格・プロモーション情報

– 売場導線・在庫状況・特売棚・エンド陳列を口頭で短く案内。

混雑・騒音の度合いも共有。

– 価格は「本体価格+税込」を明確化。

必要に応じて単位価格(100g・100ml当たりなど)へ換算して比較。

– 特売条件(会員限定、まとめ買い条件、時間限定、割引率と通常価格)を簡潔に。

– 値引きシール・賞味/消費期限差の説明(後述)も忘れずに。

B. ラベル情報の構造化読み上げ(30秒・1分・詳細の三段階)
– 30秒版(即決向け要約)
1) 商品名・種類/容量
2) 価格・単価
3) 特徴の一言(例 減塩、無糖、国産小麦、オーガニック)
4) 期限(賞味/消費と日付)
– 1分版(比較検討用)
1) 原材料の主要項目(上位数点と産地)
2) アレルゲン(特定原材料を優先)
3) 栄養成分の要点(エネルギー、たんぱく質、脂質、糖類/炭水化物、食塩相当量)
4) 保存方法・開封後の目安
5) 製造者・原産国・機能性表示/特保の有無
– 詳細版(本人が追加で知りたい点に限る)
例 添加物の個別名と用途、フェアトレード等の認証マーク、調理時間、レンジ対応、容器のリサイクル区分、注意事項(辛味・アルコール含有等)。

C. 触覚・重量・操作性の補助
– 容器形状(握りやすさ、注ぎ口、キャップの硬さ、片手で開けられるか)、重量感、サイズ(収納可否)を実物に触れて確認してもらう。

– 落下・破損リスクに配慮して、重い/割れ物は低い位置で手渡し。

本人の希望があればスタッフにも協力を依頼。

– 嗅覚・硬さ等の確認は衛生面と店舗ルールを守る(生鮮の直接接触は不可が基本)。

D. デジタル補助の活用と限界
– バーコード読み取りで「製品名・容量・簡易情報」を即時提示できる場合あり。

ネット接続が弱い売場ではOCR+端末内読み上げを活用。

– 店内放送や電子棚札の情報は騒音で聞き逃しやすい。

必要情報は口頭で再構成。

– アプリ・端末の操作は、本人の主導を尊重しつつ、必要最小限を代行。

本人の意思決定を支える具体的な進め方
A. 比較の枠組みを共有(中立性・一貫性)

– 事前に合意した関心軸(例 単価→アレルゲン→塩分→期限の順)で各候補を同じ順序・同じ粒度で説明。

フレーミング効果(誘導)を避ける。

– 候補は原則3つまで(認知負荷の軽減)。

必要なら「候補カゴ」と「購入カゴ」を分け、最後に再比較する。

B. 開かれた質問で価値を引き出す
– 「今日は価格優先で良いか、味(いつもの味)を優先するか?」
– 「期限は長い方が良いか、今夜使うので短くてもOKか?」
– 「容量が大きいお得品と、軽い小容量のどちらが持ち帰りやすいか?」

C. 数値・事実の可視化(音声での“見える化”)
– 「Aは500gで税込398円、100gあたり80円。

Bは300gで税込298円、100gあたり99円。

単価はAが安い」
– 「Bには小麦・卵が含まれる。

Aは小麦なし」
– 「Cは賞味期限が最長(6か月)、Aは2か月」

D. 過剰介入の抑制と確認
– 推奨は避け、根拠付きの事実を提示。

「私なら~」は封印するのが基本。

本人が求めた場合のみ意見を述べ、必ず根拠を付す。

– 迷いが大きい時は「今日は試しに少量で」を選択肢として提示。

試行の自由を担保。

E. 決済・レジでの自立支援
– 合計金額・支払方法の確認(現金・IC・QR)。

セルフレジの音声有無を事前確認。

– レシートはその場で要点読み(合計・割引・次回クーポンの有無)か、後で落ち着いて読み上げ。

安全・衛生・動線の工夫

– 温度帯順(常温→冷蔵→冷凍)、冷凍品は最後に。

保冷バッグ・保冷剤の準備。

– 混雑回避の時間選び。

白杖・盲導犬同行時の周囲への声かけと、店員との連携。

– エレベータや狭い通路の誘導は、事前説明→接触確認→最小限の身体介助。

よくある判断要素の読み上げ優先順位(例)

– 食品 商品名・容量・価格/単価・期限・アレルゲン・主要原材料・産地・栄養(塩分・糖類・脂質)・保存方法・調理時間・機能性/特保の有無
– 日用品 用途/対応素材・容量/回数・価格/単価・香りの有無・成分(刺激性/アルコール/漂白等)・詰替可否・容器の掴みやすさ
– 医薬品・衛生用品 区分(医薬品/医薬部外品/化粧品)・有効成分・用法用量・禁忌/注意・使用期限・メーカー相談窓口(薬局では薬剤師の説明を必ず優先)

事例的な会話の流れ(短縮版)

– 支援者「今日の優先は牛乳と食パン、予算は2千円までで良いですか?」
– 本人「はい。

牛乳は低脂肪、パンはやわらかめで」
– 支援者「牛乳3品です。

Aは1L税込198円、賞味期限4日、低脂肪。

Bは1L税込248円、期限7日、特売なし。

Cは900ml税込198円、期限6日。

有効期限は長いのが良いですか、単価重視ですか?」
– 本人「期限重視でBにします」
– 支援者「了解。

パンはAが税込138円、しっとり系。

Bが税込158円、国産小麦、賞味2日。

どちらにします?」
– 本人「今日はAで」

購入後の振り返り

– 味・使い勝手・量・価格満足度・持ち帰りの負担感をヒアリングし、次回の関心軸・候補リストを更新。

失敗やミスマッチも学びとして記録。

ルール・制度・表示に関する主な根拠

– 同行援護の位置づけ(障害者総合支援法)
・視覚障害者等の外出時における移動の支援に加え、代読・代筆・情報提供等を行うとされる。

指定同行援護の人員・設備・運営基準(厚生労働省令)および厚生労働省の通知・研修テキストで、情報支援・代読が明記。

・本人の自己決定尊重は、障害者権利条約(CRPD)および障害者基本法・障害者差別解消法の趣旨と整合。

支援は代行決定ではなく、意思決定支援(supported decision-making)が原則。

– 食品表示(消費者庁)
・食品表示法および食品表示基準により、名称、原材料名、添加物、内容量、期限表示(消費期限/賞味期限)、保存方法、製造者等、栄養成分表示が原則義務。

・アレルゲン表示 特定原材料(例 えび、かに、くるみ、卵、乳、小麦、そば、落花生)等の表示制度がある。

重篤なアレルギーの回避に必須。

・期限表示の定義 消費期限=安全に食べられる期限(傷みやすい食品)、賞味期限=おいしく食べられる期限(比較的長期保存可能)。

買い物順路や在庫回転に影響。

・機能性表示食品制度・特定保健用食品(トクホ) 表示の意味と限界を説明し、誤認を避ける。

– 価格・単位価格表示
・単位価格表示はガイドライン等に基づき多くの小売で実施(品目や店舗で差)。

比較時の有効な指標として活用。

– 個人情報・守秘義務
・福祉専門職としての守秘義務・プライバシー配慮は、事業運営基準・倫理綱領等に位置づく。

購入内容や健康・嗜好に関する情報の取り扱いは最小限・本人の同意で。

現場で役立つミニ・テクニック

– 読み上げテンプレ(口頭カード化)
「商品名/容量→税込価格・単価→期限→(必要に応じ)主要原材料・アレルゲン→保存→特徴1行」
– 時間管理
・総時間の3割を比較検討に、7割を移動・決済・梱包に確保。

最後の5~10分は冷蔵/冷凍と精算バッファ。

– 音声認識メモ
・その場の選好を音声でメモし、次回の買い物リストに反映(例 「塩分1g台のスープが好み」)。

– 連携
・店員への一言依頼(静かな見本エリア、在庫の確認、重い商品のカート積み)。

合理的配慮の範囲でお願いする。

禁忌・注意

– 支援者の嗜好や価値観の押し付け、過度の誘導は避ける。

– 立替払いは原則不可。

会計金銭の受け渡しは透明性確保(その場で金額読み上げ、レシート即時確認)。

– 医薬品の説明は薬剤師の指導を優先。

自己判断の助長を避ける。

まとめ
– 商品情報の補いは、視覚情報を音声・触覚・数値比較・デジタルで再構成する技術。

– 意思決定支援は、本人の価値・関心軸に合わせて中立的に情報を整理・比較し、認知負荷を下げる設計。

– 制度上も、同行援護は「移動+情報支援」に基づく自己決定尊重が根拠。

食品表示等の制度知識を押さえることで、実用性と安全性が高まる。

この枠組みを、利用者ごとの「関心軸プロファイル」と「読み上げテンプレ」を作って運用すると、買い物体験の満足度・効率・安全性が安定して向上します。

次回の同行までに、今日の購入の満足点/不満点を短く振り返り、プロファイルを継続的に更新してください。

支払いやプライバシー保護はどのような方法で安全に行えるのか?

以下は、同行援護を活用した買い物支援における「支払いの安全確保」と「プライバシー保護」を中心に、実務で使える工夫と根拠(法令・制度・一般的な規約)を整理したものです。

現場での標準化やトラブル予防に役立つよう、手段別・場面別に詳述します。

基本原則(制度上の守備範囲と倫理)

– 同行援護の範囲 外出時の移動に伴う情報支援・代筆代読・購買時の意思決定支援は含まれますが、金銭・資産の「管理」や「預金の出し入れの代行」「立替払い」は原則不可とされます。

支払いはあくまで本人の意思と本人名義の手段で、介助者は必要な情報提供と安全配慮を行う立場です。

– 守秘義務・個人情報保護 事業者・従業者には個人情報の適正管理義務と守秘義務があります。

買い物内容が健康・信条等の要配慮情報を推知し得る場合、特に慎重な取り扱いが求められます。

– 合理的配慮 店舗側には障害者差別解消法に基づき、金額の口頭確認、暗証番号入力時の遮蔽、列の並び替えなどの合理的配慮を求めることができます。

支払い方法ごとの安全なやり方
2-1. 現金

– 携行方法 封印できる小型ポーチ(ファスナー+封印テープ)や、紙幣・硬貨を仕切れるケースを本人が携帯。

介助者が保管するのは原則避けます。

– カウント手順 支払い前に金額を口頭で復唱し、本人が取り出す。

釣銭はトレー上で枚数を触覚・視覚で確認し、レシートと照合。

必要なら静かな場所で再確認。

– 一時預かりが不可避な場面(両手が塞がる等) 事前同意を得て、預かり開始・返却時に双方で金額・時刻を口頭確認し、メモまたはサービス記録へ簡潔に残す。

長時間の預かりや持ち帰りは不可。

– プライバシー配慮 レジ周りで金額や財布の中身を見られないよう体の向き・距離を調整。

混雑時は別レジや時間帯の変更も検討。

2-2. デビットカード・クレジットカード・タッチ決済
– 暗証番号(PIN)は本人のみ入力。

介助者は視線・体の位置で覗き見防止の環境を作り、入力台の遮蔽板を依頼。

会話で数字を復唱しない。

– サイン扱いのクレジット決済での代筆は原則不可(カード会員規約上は名義人本人の署名のみが有効)。

IC/PINやコンタクトレス(Tap to Pay)の利用に切り替えると安全。

– タッチ決済(Visaタッチ等)は一定額以下でサイン/PIN不要でも、カードの保持・タップ操作は本人。

介助者は端末の位置・向きを案内するのみ。

– 紛失・盗難時の対応を事前確認(カード裏面の連絡先、限度額、利用通知の設定)。

2-3. 交通系IC・電子マネー(Suica/WAON/nanaco/iD/QUICPay等)
– 長所 少額決済が早く、PINやサインが省略されるため覗き見リスクが低い。

残高読み上げ対応のアプリもあり、視覚障害の方にも相性が良い。

– チャージ 現金チャージは本人が操作。

オートチャージやクレカ紐付けは本人同意と理解のもとで設定し、利用通知や上限を設定。

介助者による代理操作は避ける。

– 実務 端末のタッチ位置・高さ・向きを口頭で案内。

残高不足時の対応(チャージ機の位置、操作の読み上げ・指差し誘導)を準備。

2-4. スマホQRコード決済(PayPay、d払い、楽天ペイ、メルペイ等)
– 原則 生体認証やパスコードを伴うため、操作は本人のみ。

介助者が本人スマホを持って操作するのは、本人性・規約・プライバシーの観点から避ける。

– 介助の範囲 画面読み上げの補助、カメラの向きや距離のガイド、店舗QRの位置案内、金額の口頭確認。

アプリの残高や履歴を不用意に見せない/読まない。

– リスク対策 利用通知オン、1回あたり/1日上限の設定、紛失時の遠隔ロック手順を本人と共有。

2-5. 通販・宅配に絡む決済(代引き・後払い・振込)
– 住所・氏名・電話番号の提供は本人同意のもと必要最小限。

支援者端末に保存しない。

紙メモは持ち帰らない。

– 代引き時は事前に釣銭の必要額を計算し封筒分け。

高額は避け、可能ならキャッシュレスに変更。

– 後払い請求書の開封・内容確認は本人立会いで。

支援者の私物カメラで撮影共有などは行わない。

プライバシー保護の具体策

– 店内・レジでの会話 商品名や疾患名が周囲に聞こえないよう声量・位置取りを調整。

デリケート品はメモやスマホの大きな文字表示・商品コードで示す。

– 代読・代筆 必要最小限とし、会員登録用紙等は匿名化・省略可能箇所を店舗に相談。

不要不急の会員登録は断る選択肢も提示。

– 配送手続き 住所・電話番号は本人が記入。

困難な場合は代筆の前に同意を得て、書き終わりに読み上げ確認。

控えは本人に渡し、支援者はコピーを保持しない。

– 記録の最小化 サービス提供記録には、過度な商品詳細や健康情報を記載しない。

必要なら「医薬品購入あり(店名・金額)」程度。

レシートは原則本人保管。

事業所で一時保管する場合は期間と保管方法を明確化し、廃棄は溶解・裁断。

– 端末・データ管理 業務連絡に個人情報を含めない(LINE等での氏名・住所送信を避ける)。

どうしても必要な場合は事業所の規程に従い暗号化・期限付き共有。

私物端末への保存禁止。

– 写真・動画 記録や研修目的の撮影は原則禁止。

例外的に同意があっても、同意の範囲・保存期間・利用目的を明文化。

セルフレジや店側のオペレーションへの配慮

– セルフレジは画面の視認や操作が困難な場合が多く、有人レジへ切り替えを依頼。

どうしてもセルフを使う場合は、読み上げ・位置案内・操作説明は可だが、支払い確定やPIN入力は本人。

– 合理的配慮の依頼例 金額の口頭復唱、暗証番号入力時の遮蔽、座位での会計、混雑回避の優先案内、領収書の拡大印字や読み上げ。

– 会員カード・ポイント 個人情報提供や購買履歴の蓄積をどうするかを本人と事前に協議。

不要なら断る。

登録済みならバーコードの提示だけに留める。

事前合意・ルールづくり(トラブル予防)

– 個別支援計画に「支払い支援の範囲」を明記(例 金額確認の口頭支援、釣銭確認、端末位置の案内、PIN入力の遮蔽確保、現金の一時預かりは原則しない 等)。

– 事前チェックリスト
– 使う決済手段と予備手段(現金・IC・カード)
– 上限金額と緊急連絡先
– センシティブな商品購入時の伝え方
– レシート・ポイント・配送情報の扱い
– 金銭トラブル時の手順を共有(レジでの即時申出→店舗記録→事業所報告→利用者へ説明)。

よくあるグレーゾーンと判断基準

– 立替払い 原則不可。

やむを得ず発生しないよう計画。

制度上もリスク・不正防止の観点から避けるべき。

– 代筆サイン クレジット決済の署名は名義人本人のみ有効。

代筆は不正利用と誤認されるおそれ。

IC/PINや非接触へ切替。

– 一時預かり その場限り・短時間・明確な指示・往復確認・記録の4条件を満たし、持ち帰らない。

事故・紛失・誤請求への対応

– 現金差異 その場で店舗に申し出、監視カメラ・レジ記録で確認。

解決しない場合は事業所に報告し、記録を残す。

– カードの紛失・不正利用 速やかに発行会社へ停止連絡。

利用通知や上限設定が早期発見に有効。

– QR決済の誤スキャン 返金フローは各社の規約に従い、店舗での取消処理を依頼。

アプリの問い合わせ窓口も併用。

– 端末・書類の置き忘れ 発見時の連絡先貼付、ネックストラップやポーチで物理的紛失を予防。

根拠・参考となる規程・公的資料(要点)

– 障害者総合支援法および同法に基づく指定基準等
– 同行援護は移動等に際し必要な情報提供・代読代筆等を行うサービス。

金銭・資産の管理や立替・預金の出し入れの代行は原則対象外とされる各種Q&A・運営基準通知が示されています(厚生労働省の「同行援護の手引き」「指定基準Q&A」等を参照)。

– 事業者・従業者の守秘義務、個人情報の適正管理義務が課されています。

– 個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)
– 目的外利用の禁止、漏えい防止、安全管理措置、要配慮個人情報の慎重な取扱い。

– 障害者差別解消法
– 民間事業者等の合理的配慮の提供義務(2024年度以降、義務化範囲が拡大)。

会計場面での読み上げ・遮蔽等の配慮を求める根拠。

– クレジットカード会員規約・国際ブランドルール
– 署名は名義人本人のみ有効、暗証番号・カードの第三者への貸与禁止、非接触決済時も本人利用が前提。

– 電子マネー・QR決済各社の利用規約
– パスコード・生体認証の管理、第三者使用の禁止、上限・通知・紛失時の停止手続等。

– 自治体・業界のガイド
– 各都道府県・市区町村の同行援護実施要綱・Q&A(現金の一時預かりや代行範囲の解説)。

– 視覚障害者向け買い物支援の実践資料(音声読み上げ活用、貨幣識別の工夫等)を紹介する当事者団体や支援団体のガイド。

すぐに導入できる実務チェックポイント(抜粋)

– 出発前
– 本日の決済手段と予備手段を確認。

利用通知・上限設定をオン。

– 必要金額を概算し、現金は小分け封筒。

ICは残高確認。

– 会計時
– 金額の口頭確認→本人操作。

PINは覗き見防止。

釣銭はその場でレシートと照合。

– 情報保護
– 周囲に聞こえない声量・位置。

会員登録や個人情報記入は最小限・同意を得てから。

– 記録
– 金銭の受領・返却があった場合のみ簡潔に残す。

レシートは本人保管。

– 事後
– 誤請求・差異があれば即日連絡・記録。

カード・QRは履歴を本人と確認。

最後に
– 同行援護は「本人の自立した選択と決済を支える」ことが核です。

支援者が「代わりに支払う・操作する」よりも「安全に本人が支払える環境を整える・情報を補う」ことに注力してください。

– 運用の細部は自治体のローカルルールや事業所の運営規程で差があるため、サービス提供責任者と合意形成し、個別支援計画や手順書に落とし込むのが実務上の確実策です。

補足の根拠メモ
– 厚生労働省「障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスの手引き」「同行援護の手引き」「Q&A(運営基準・報酬)」では、同行援護の支援内容(情報支援・代読代筆等)と、金銭管理・立替等の不可が繰り返し示されています。

– 個人情報保護法(令和改正後)による安全管理措置義務、要配慮個人情報の取扱い、目的外利用の禁止。

– 障害者差別解消法(合理的配慮の提供義務)。

– クレジットカード会社・国際ブランドの会員規約(本人署名・本人利用の原則)および電子決済各社の規約(第三者使用禁止、セキュリティ設定)。

これらの原則と手順を組み合わせることで、支払いの安全とプライバシー保護の両立が現実的に可能になります。

現場では「本人操作を前提に、情報と環境のバリアを除去する」方針を徹底し、例外対応(預かり・代筆など)が発生しない計画づくりを心がけてください。

介助者との役割分担と振り返りはどんな工夫で継続的に改善できるのか?

以下は、同行援護を活用した買い物サポートにおける「介助者との役割分担」と「振り返り(レビュー)」を継続的に改善するための具体的な工夫です。

制度上の原則と実践知に基づいて、準備→実行→振り返りの流れで整理し、現場で使えるチェックやテンプレート、改善の指標まで含めて解説します。

最後に根拠(制度・ガイドライン・研究)もまとめます。

基本原則(役割分担の前提)

– 自己決定の尊重 何を買うか、どれを選ぶか、いくらまで使うか等の意思決定は本人が担う。

介助者は情報提供と安全確保、手続きの理解・実行の支援に徹する。

– 情報支援の充実 価格・容量・賞味期限・産地・割引・在庫・棚の位置など「視覚情報の代替」を分かりやすく提供するのが介助者の主役務。

– 安全とプライバシー 歩行・移動の安全確保、混雑回避、レジ周りの視線配慮、医薬品や嗜好品などプライバシーに配慮した声かけを徹底。

– 金銭管理の原則 支払いは原則本人が行い、介助者は端末位置や画面内容の読み上げ、操作手順の口頭案内で支援。

現金・カード・QRのいずれも、預かりや管理の代行は原則避ける(事業所ルールや本人同意に基づく限定的な補助はあり得るが、記録と合意を徹底)。

事前準備(役割分担の設計)

– 目的の明確化と優先順位づけ
– 買うもののリスト(第一優先/代替可/見て決める)の三層に分ける。

– 予算・所要時間・疲労の想定(例 60分以内、歩行休憩を1回挟む)。

– 店舗情報の事前収集
– 混雑の少ない時間帯、入口・サービスカウンター・トイレ・レジ配置。

– セルフレジの音声案内有無、サポートが受けやすい有人レジの場所。

– 役割の具体化(RACIの発想)
– 本人がResponsibleな項目 購入決定、カゴの所有・管理、支払い最終確認、レジ操作、持ち帰る量の判断。

– 介助者がResponsibleな項目 移動安全(手引き・危険予知)、棚・価格・期限などの代読、レジの並び誘導、店員連携、荷詰め台の確保、周囲状況の逐次説明。

– 共同で行う項目 商品比較の評価軸づくり(価格/容量/原材料/栄養/産地等)、支払い方法の選択(現金・IC・QR)、休憩のタイミング。

– 合図と指示語の取り決め
– 方向の伝え方は「時計方向(3時方向に30cm)」「段差カウント(段差まで3歩)」を採用。

– 介助の手出しを控える合言葉を決める(例 「ワンカウント」=介助前に必ず声かけと1拍待つ)。

– 過干渉防止のルール(本人が探す時間を10〜15秒確保→必要時のみ口頭補足)。

– ツール準備
– 音声メモの買い物リスト、点字/立体文字リスト。

– 商品バーコード読み上げアプリ、価格メモ用の簡易録音、エコバッグ位置の固定化。

– 決済の事前設定(ICタッチ位置を練習、スマホ決済の読み上げ設定確認)。

実行(店内での役割分担とコミュニケーション)

– 入店〜売り場到達
– 介助者 手引きの基本(体側後方半歩、狭所は前腕位置変更)、床材・音・匂いの環境情報を最小限・具体的に提供。

– 本人 白杖やカゴの保持位置を選択(右手白杖、左手カゴなど)。

疲労や眩しさ等の感覚状態を早めに申告。

– 商品探索と比較
– 介助者 棚の構造をマクロ→ミクロで説明(通路番号→棚段→左から何番目)。

– 比較は評価軸を先に合意し、短文で等距離に比較(「同容量でAが20円安い。

Bは無添加。

」)。

– 触察支援 容器形状やサイズの触りやすい向きを提示し、触察の時間を確保。

– カゴ管理と動線
– 介助者 カゴの位置は本人が常に把握できる固定位置に。

通行の邪魔にならない停車位置を確保し、離れる前に声かけ。

– レジ前〜会計
– 列の状況・待ち時間の比較を情報提供し、本人が選択。

– 支払い手順の口頭誘導(端末は右手側、タッチ面は胸の高さ、今から金額が表示)。

– 金額の読み上げ確認→本人の最終確認→決済。

レシート内容の重要項目のみ要約(合計、支払い方法、ポイント残高等)。

– 荷詰め・持ち帰り
– 荷重バランスを本人が決定。

介助者は重い物の下敷きなど事故防止に配慮して詰める。

– 休憩の要否を確認し、退店後の交通手段へ誘導。

段階的な自立促進(スキャフォルディング)

– 最初は介助者が積極的に情報提示し、慣れるにつれて「質問型」に切り替える(例 「価格と容量、どちらを優先しますか?」)。

– 店舗ごとに「攻略ノート」を作り、毎回1つずつ本人タスクを増やす(セルフレジの操作、棚マップの記憶、アプリ操作など)。

– 代替案の準備から「現場で選ぶ」への移行を段階的に。

当日の簡易振り返り(終礼10分)

– 成功したこと(K Keep)、課題(P Problem)、次回の試行(T Try)を短く共有。

– 指標を簡単に記録
– 所要時間、目的達成率(購入できた項目数/予定)、誤購入の有無、疲労度(0〜10)、ヒヤリハット件数。

– 次回の小さな実験を1つ決める(例 支払いをQRからICに変える、通路の順番を逆回りにする)。

定期モニタリングと記録の活用(継続改善の仕組み)

– 記録の標準化
– サービス提供記録票に「情報支援内容」「意思決定の主体」「危険予知・回避」「買い物KPT」の欄を設ける。

– インシデント/ヒヤリハットの記録と対策欄(段差見落とし、台車接近、カゴ接触など)。

– 月次レビュー(本人・事業所・必要に応じ家族)
– PDCAで改善 時短、満足度、誤購入率、支払いのスムーズさ(端末前での停滞時間)などKPIを可視化。

– 役割の見直し 本人が担えるタスクを増やし、介助者は情報支援の質を高める方向へ再配分。

– 引継ぎの質確保
– 担当替え時は「店舗攻略ノート」「用語・合図」「本人の好み・地雷(触られたくない場面等)」を共有。

– 同じ用語・合図体系を事業所で標準化し、ブレを減らす。

現場で使えるミニテンプレート(例)

– 事前合意メモ
– 今日の目的 ____
– 時間/予算 __分/__円
– 優先(必須/代替可/現場判断) ____
– 支払い方法 現金/IC/QR(予備 __)
– 合図と言い回し 時計方向/ワンカウント/段差カウント
– 当日メモ(チェック式)
– 入店〜売り場案内[] 商品比較情報提供[] 触察時間確保[]
– レジの選択説明[] 金額読み上げ→最終確認[]
– ヒヤリハット(内容) ____
– 終礼KPT
– K __ P __ T(次回試すこと) __
– 指標 所要__分、満足__/10、誤購入[有・無]、疲労__/10

うまくいくコツ(現場の細かな工夫)

– 話しかける頻度は「必要時に短く具体的」に。

説明は上から順に階層化(全体→位置→特徴)。

– 数量・距離・方向は曖昧語を避ける(「すぐ」ではなく「2歩先」「右前45度」)。

– 比較は最大3択まで。

迷いが長い時は「優先軸」を再確認。

– 混雑や音量が高い時は、静かなコーナーで一旦合意を取り直す。

– セルフレジは読み上げが不十分な場合があるため、無理せず有人レジを選択する判断も本人に委ねる。

– 店員への依頼は本人の同意を得てから。

プライバシーに配慮し、離れた場所で相談する。

継続改善の指標例(KPI)

– 平均所要時間、購入達成率、誤購入率、返品率
– レジ待ちから会計完了までの時間、支払い操作の口頭誘導回数
– ヒヤリハット件数と重症度、疲労・満足度スコア
– 介助者の介入回数(理想は過不足のない適正水準へ)

ICT活用の工夫

– バーコード読み上げやOCRで商品の同定・成分確認を補う。

– 店舗アプリのクーポン・棚位置情報があれば事前に確認して音声メモ化。

– 非接触決済の音声フィードバックを事前テストし、誤タッチを減らす。

根拠(制度・ガイドライン・研究など)
– 制度・運用の原則
– 障害者総合支援法に基づく同行援護は、視覚障害者の外出時に必要な移動支援・情報支援・代読代筆等を提供するサービスであり、本人の自己決定と自立支援が原則。

金銭や財産の管理は原則本人が担い、介助者は支払い操作の理解や手続きの補助を行う枠組み(厚生労働省「障害福祉サービスの手引き」「同行援護の運用通知・Q&A」等)。

– 同行援護従業者養成研修(一般課程・応用課程)では、手引きの方法、情報支援の具体、危険予知、プライバシー配慮、緊急時対応が標準化されており、本文の手順・用語(時計方向・段差カウント・ワンカウント等)は歩行訓練士やガイド研修で推奨される実践手法に基づく。

– 実践ガイド
– 自己決定の尊重と情報支援の充実は、全国自治体の「同行援護の手引き」や視覚障害リハビリテーション関連団体の外出支援ガイドで共通する基本方針。

– 店内誘導や触察の支援、比較のための要約スキルは、視覚障害リハビリテーション(O&M)領域の標準的実践。

– 継続改善(KPT/PDCA・チェックリスト)の有効性
– 医療・介護・産業分野でチェックリストと短時間のレビュー(KPT/PDCA)がエラー削減とプロセス標準化に有効であることは広く示されており、外出支援のような多段階タスクにも転用可能。

本人参加の振り返りは当事者中心の支援(Person-Centered Care)と共有意思決定(Shared Decision Making, SDM)の実践であり、満足度やアドヒアランス向上に資するというエビデンスがある。

– 金銭支援の線引き
– 介助者による金銭の預かり・管理は原則業務外とする自治体運用が多く、やむを得ず補助する場合は本人の明確な指示、事業所のルール、記録の厳格化が求められる(自治体「同行援護Q&A」「不正防止の留意事項」等)。

注意点
– 事業所や自治体の運用細則に差があるため、「支払い補助の範囲」「セルフレジ対応」などは所属事業所のマニュアル・管轄自治体の通知をあらためて確認する。

– 店舗環境やアプリ機能は更新されるため、実地での試行→記録→改善を続けることが最重要。

まとめ
– 役割分担は「本人の意思決定と実行の維持」を中心に、介助者は安全・情報・手続き支援を担う。

– 事前の合図・用語の取り決め、情報提供の要約力、過干渉を防ぐ仕組みが質を左右する。

– 当日のミニ振り返りと月次のPDCA、チェックリスト化とKPIの可視化で、短いサイクルの改善を回す。

– 制度の原則(自己決定・情報支援)と実践ガイド(手引き・O&M)に沿って、段階的に本人タスクを増やすことで、買い物の自立度・満足度・安全性が継続的に向上する。

この枠組みをそのまま現場に持ち込み、1回ごとにKPTを一行ずつでも積み上げていけば、必ず改善が実感できるはずです。

【要約】
買い物支援は三層で準備。安全・権利に直結は決め切る(目的・優先順位、予算/決済、時間枠、店舗/ルート、持ち物、緊急対応)。選択の幅は範囲を定め現場判断(仕様許容・代替基準・試着等)。未知は代替案と優先順位を明確化。事前リサーチとアクセシブルなリスト、当日の簡潔なブリーフィング〜振り返りで運用。店内は優先品から効率回遊、比較は最大3点。レジでは手順確認とレシート読み上げ。合図や役割分担も事前に共有。