コラム

同行援護で安心・スムーズに外出するための実践ガイド――計画、合図と歩行ペース、安全対策、交通選び、備えまで

外出前の計画と情報共有は何をどこまで決めて伝えるべきか?

以下は、同行援護で安心して外出するために、外出前の「計画」と「情報共有」で何をどこまで決めて伝えるべきかの実務的な整理と、その根拠です。

利用者、同行援護従業者、サービス提供責任者、家族、訪問先や交通事業者との連携を想定しています。

外出前に「決めること」の全体像
外出の質と安全性は、事前計画で7割が決まります。

次の観点で「具体的に」「合意して」おくことが重要です。

– 目的と優先順位
– 例 買い物(上着を最優先で購入)、病院受診(採血→診察→会計の順)、イベント参加(開演10分前着席が最優先)
– 目的が複数ある場合は「絶対に外せないもの」と「状況により省略可」を明確化
– 日時・所要時間・予備時間
– 出発・帰宅の目標時刻、想定所要時間、乗換・会計・トイレのバッファ(各工程5~15分を目安)
– 遅延が生じた際の意思決定基準(例 次に遅延したら昼食を軽食に切り替え)
– 行程・ルート・代替ルート
– 交通手段(鉄道・バス・タクシー・徒歩)、乗換駅、乗車位置、混雑回避ルート
– エレベーター点検や工事情報の有無、雨天時の屋根付き動線、代替の駅出入口
– 集合・解散の具体
– 集合場所のランドマーク(「改札内」か「外」か)、顔合わせの合図(音声・電話)
– 解散場所と解散後の移動の自立可否、見送りの要否
– 目的地のバリアフリー情報
– 出入口の段差、エレベーターの位置、誘導ブロックの有無、受付カウンターの場所・高さ、館内の暗さ・音量
– 多機能トイレの位置、休憩スペース、避難経路
– 休憩・トイレ・食事計画
– 休憩の頻度と所要時間、トイレ間隔の目安、昼食の場所(席予約の要否、静けさ)
– チケット・受付・支払い
– 事前予約の有無、発券・受付動線、本人確認書類、障害者割引・介助者扱い
– 支払い方法(現金・IC・クレカ)、立替の可否と領収書名義
– 持ち物・装備
– 白杖・スマホ・モバイルバッテリー・イヤホン(片耳)・雨具・帽子・飲料
– 常備薬・頓服、アレルギーカード、保険証・障害者手帳、着脱しやすい上着、滑りにくい靴
– 体調・既往歴・注意点
– 低血糖・てんかん・起立性低血圧などの兆候と対応、花粉症・香料過敏など感受性
– 睡眠不足・暑熱・寒冷への対応(給水・防寒)
– コミュニケーションと手引きの約束
– 声かけのタイミングと用語(右・左か時計方位か、段差は「3段上がります。

1段約15cm」など具体)
– 接触方法(肘を持つ、肩に手を添える)、停止の合言葉(「いったん止まります」)
– 情報提供の粒度(混雑・音・匂い・明るさなど環境情報は事前予告+直前再告知)
– 役割分担・連絡体制
– 誰が交通機関に連絡するか、目的地への合理的配慮依頼は誰が行うか
– 緊急連絡先(家族・事業所・医療機関)と優先順位
– 中止・変更の基準
– 悪天候・設備故障・体調不良時の判断ライン(警報発令、エレベーター停止時は延期、など)
– 事務・制度上の確認
– サービス提供時間の枠(支給量の範囲)、自己負担・実費の扱い
– 同意書・サービス提供記録に記載する事項、写真撮影の可否

「どこまで」伝えるかの基準と相手別の範囲
個人情報保護と安全確保のバランスが基本です。

原則は「安全と円滑な支援に必要最小限」「本人同意に基づく共有」です。

利用者⇄同行援護従業者(最も詳細)

上記の全項目を具体レベルで合意。

特に健康・服薬・アレルギー・緊急対応・コミュニケーション約束は明確に。

体調や嗜好の微妙な点(大音量が苦手、香水が苦手、暗所で歩速を落としたい等)も共有。

事業所内共有(必要な範囲)

行程、連絡体制、リスク、健康上の留意点(必要最小限に要約)、合理的配慮の依頼内容。

次回のための学び(ヒヤリ・ハット)も本人同意の上で共有。

家族・関係者(本人同意を前提に限定共有)

出発・帰宅予定、緊急連絡先、服薬の確認事項など安全に直結する情報。

詳細な健康情報やプライバシー性の高い内容は、本人の希望に沿って必要最小限。

目的地・交通事業者(合理的配慮に必要な範囲)

視覚障害があり同行援護で来訪すること、誘導や座席調整、静かな席、段差回避動線などの希望。

氏名・障害等級など特定情報は原則不要。

予約番号や来訪時間、連絡先程度に留める。

その他の第三者

原則共有しない。

写真・SNS等は本人の明確な同意がある場合のみ。

共有の具体的な方法(テンプレート例)
簡易の共有シートを事前に作り、利用者・従業者・事業所で確認します。

例 

– 外出目的/最優先事項 
– 日時・集合/解散 
– 行程(駅名・乗換・乗車位置・代替ルート) 
– 目的地の情報(受付、エレベーター、トイレ、休憩場所) 
– 休憩・トイレの目安 
– チケット・支払い(割引、立替、領収書名義) 
– 持ち物チェック(白杖、手帳、薬、バッテリー、雨具、飲料) 
– 体調・注意点(アレルギー、発作時対応) 
– コミュニケーションと手引きの約束(声かけ、段差案内法、停止合図) 
– 緊急連絡先と優先順位 
– 中止・変更基準 
– 連絡担当(交通機関/目的地) 
紙でもスマホでもよいですが、当日はオフラインでも見られる形にしておくのが安全です。

実務のコツと見落としやすい点

– 時間の余裕は「乗換1回につき+10分」「受付・会計は+15分」を目安に。

– 駅係員のサポートは、可能なら前日までに連絡。

エレベーター故障情報は当日朝に再確認。

– 混雑と騒音のピークを回避(通勤ラッシュ、イベント開場直後を避ける)。

– 気象と路面(雨天の床滑り、夏場の熱中症、冬場の凍結)に応じて靴・服装・給水計画を調整。

– 情報提供の粒度は「5~10秒前の予告+直前の再告知+通過後の結果報告」(例 「この先3mで左に90度曲がります」「今、左に曲がります」「曲がりました」)。

– 段差や階段は「数・高さ・幅」をセットで具体的に。

– 支払いは少額硬貨の小分けやICチャージ残高確認を事前に。

– 医療・薬の情報はカード化(薬剤名・用量・発作時対応)。

– 初対面時の不安軽減のため、声の特徴・自己紹介の定型(「右側に立っています◯◯です」)を決めておく。

– 事後は必ず振り返り(良かった点・改善点)を3項目ずつ共有し、次回計画に反映。

根拠(法制度・指針・実務知見)

– 障害者総合支援法および同行援護の指定基準
– 同行援護は、移動の介助に加え、視覚情報の提供、代筆・代読等を含むと定義され、適切なアセスメントに基づく個別支援計画の作成・実施が求められます。

事前の目的・行程・情報提供方法の合意は、この「個別支援計画」に沿ったサービス提供の根幹です。

– 厚生労働省の留意事項通知・運営基準
– サービス提供責任者による事前調整、危険予知、記録作成、個人情報の適正管理が求められています。

計画的な提供と必要最小限の情報共有は、運営基準の趣旨に合致します。

– 同行援護従業者養成研修テキスト(各自治体指定カリキュラム)
– 安全な手引き、情報提供の方法、リスクアセスメント、事前説明の重要性が体系化されています。

段差・曲がり角・環境音・混雑などの「見えないリスク」を事前に予測し、共有することが事故防止に資する、とされています。

– 個人情報保護法・守秘義務
– 目的外利用の禁止、第三者提供には本人同意が原則。

外部への共有は「合理的配慮の実現に必要最小限」に限るべきという法的要請の根拠です。

– 障害者差別解消法(改正により民間事業者の合理的配慮が義務化)
– 合理的配慮の提供は、本人のニーズ表明が前提。

事前に目的地へ具体的な配慮内容(誘導、静かな席、段差回避など)を伝えることが、現場での実現性と確実性を高めます。

– バリアフリー法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)
– 駅・施設のバリアフリー化の進捗と同時に、運用面では連絡・情報提供が推奨されます。

駅員誘導や設備情報の事前確認は、移動の安全を高めるエビデンスに基づく実務です。

– 交通事業者の案内・ガイドライン
– 鉄道各社は、サポートが必要な場合は事前連絡を推奨。

乗降サポートの確実性が上がり、乗換ミス・ホーム転落等の重大事故リスクを低減します。

– リスクマネジメントの一般原則
– ヒューマンエラーは事前計画・手順化・役割明確化で有意に減少します。

同行援護は「人・環境・情報」の連携サービスであり、共有の質とタイミングが安全性の主要因です。

まとめ(要点)

– 何を決めるか 目的の優先順位、時間とバッファ、行程と代替、目的地のバリアフリー、休憩・トイレ、費用・支払い、持ち物、体調、コミュニケーション約束、役割分担、緊急対応、事務枠。

– どこまで伝えるか 安全と円滑な支援に必要な範囲を、本人同意のもとで。

利用者と従業者の間は詳細に、外部には合理的配慮に必要最小限。

– 根拠 障害者総合支援法・運営基準、養成研修テキスト、個人情報保護法、障害者差別解消法、バリアフリー法、交通事業者の実務ガイド、リスクマネジメントの知見。

最後に、当日朝の再確認(天候・設備・体調・経路)と、事後の振り返りでPDCAを回すことで、次回の安心度が一段上がります。

計画と情報共有は「一度きり」ではなく、利用者の経験と嗜好に沿って更新される「生きた約束事」として扱うのが、同行援護の質を継続的に高める最良の方法です。

同行援護従業者との合図・声かけ・歩行ペースの合わせ方はどう整える?

以下は、同行援護で安心して外出するために、同行援護従業者と「合図」「声かけ」「歩行ペース」をどう整えるかの実践的ポイントです。

現場で使える具体例と、なぜそれが安全・安心につながるのかという根拠(考え方・ガイドラインの趣旨)も併せてまとめています。

まず押さえたい基本原則(出発前のすり合わせ)

– 事前打合せ(3~5分でも可)
– 今日の目的地・経路・時間配分(乗換えの有無、混雑時間帯)。

– 利用者の見え方の特徴(明暗で見えにくい、段差が苦手、眩しさに弱い等)。

– 合図の取り決め(触覚合図・声かけの言い方・緊急時の安全ワード)。

– ペース希望(普段の歩速、疲れやすさ、休憩頻度、トイレや水分の計画)。

– 情報の優先順位
1) 身体の安全に直結(段差・障害物・車両)→ 2) 進行方向・ルート → 3) 足元と頭上情報 → 4) 周囲状況(混雑、騒音源) → 5) 参考情報(店舗、広告等)。

– クローズドループ・コミュニケーション(確認のループ)
– 従業者が伝え、利用者が復唱または合図で応答、従業者が更に短く確認する流れを習慣化。

危険場面で誤解を減らし、安心感が増します。

– 二重化(音声+触覚)
– 騒音やマスクで声が届きにくい、あるいは相手の聴覚的負荷が高い場面に備え、声かけと触覚の二重化を基本とする。

合図の整え方(触覚・身体の合図)

– 基本のポジション
– 従業者が半歩前、利用者は従業者の上腕(肘上)または肘を軽くつかむ。

手は力まず、自然に。

これが国際的なガイドテクニックの標準姿勢です。

– よく使う標準合図(例)
– 止まる 従業者が自分の体をわずかに後ろへ引き、同時に上腕を軽く二回トントン。

声は「いったん停止します」。

– 再開 上腕を一度軽く押し出す、または一回トントン。

「進みます」。

– 右左折 進行方向に上体と肘をわずかに先行させ、曲がる直前に「右(左)へ曲がります」。

– 狭い所・すれ違い 従業者の腕を背中側へ引き、利用者に従業者の背に沿って縦一列になる合図。

「狭くなります、体を細めます」。

– 段差(上り/下り) 足元の直前で上腕を少し上げる/下げる触覚+「10センチ上がります」「段差下がります」。

階段は「上り(下り)12段、手すり右」など、数と手すり側も事前告知。

– ドア 開く向きと戸の位置を伝え、「ドアが左から右に開きます、取っ手は右手側」。

回転ドアや自動ドアは「ゆっくり」「止まります」を重ねる。

– 椅子に座る 椅子の背もたれに利用者の手を触れさせて位置を明確化。

座面の高さと有無。

「背もたれあり、座面は低め」。

– エスカレーター 段の到来2~3秒前に「手すり右、乗ります、足元段差」。

降りは「あと3歩で降ります、降りて一歩前へ」。

– エレベーター ドア位置・行先ボタンの位置。

「右前がボタン、5階押します」。

混雑時は「先に人が降ります」。

– 横断歩道 信号状態、車・自転車の流れ、「青に変わりました、やや速めで渡ります、白線右寄り」など。

– 電車・バス ホーム端の距離(安全エリアに立つ)、乗り口の位置、段差・隙間の大きさ。

「一両目前から二番目のドア、隙間10センチ」。

– 緊急用の合図
– 危険停止 上腕を強く二回→三回の連続タップを「即停止」の合図として取り決め。

声も「ストップ!」と短くはっきり。

– 痛み・体調不良 利用者側の合図も取り決め(上腕を握って二回など)。

片言で「休憩」「痛い」も十分。

声かけの整え方(タイミング・内容・語彙)

– タイミング
– 早すぎると忘れ、遅すぎると対応困難。

歩行速度にもよるが、曲がり角や段差は約2~3歩手前、階段は踏み出しの1~2秒前、エスカレーターは3秒前が目安。

– 伝え方の型(短く・具体的・順序立て)
– 進行方向→足元→高さ・幅→距離の順で、短文で。

– 例 「前方右寄りに人、足元にケーブル、左へ少し回避」「まぶしい日差し、サングラス要りますか」。

– 語彙の統一
– 「ゆっくり」「普通」「少し速く」を共通理解に。

「一旦停止」「再開」「段差小さめ/大きめ」「手すり右/左」など定型句を反復使用すると混乱が減る。

– 方向の説明
– 時計法(3時方向など)や、身体相対(右手側・左肩側)を使い分け。

利用者の好みを決めて統一する。

– 情報量の調整
– 混雑時は安全に必要な最小限に絞る。

静かな場や余裕のある場面では、周囲の状況を補足して環境理解をサポート。

– プライバシー配慮
– 人前での障害名や個人情報の口外は避け、必要最低限の表現で。

声量は相手に届く最小限で明瞭に。

歩行ペースの合わせ方(速度・歩幅・休憩)

– ベース作り
– 出発直後に「これくらいの速さでどうですか?」と確認。

呼吸と歩幅が乱れない範囲が基本。

– 半歩先導
– 従業者は半歩前をキープ。

引っ張らず、肩のラインが見えないほど先行しない。

段差や混雑に応じて微調整。

– コンディション変化への対応
– 疲労、眩しさ、雨・風、騒音は歩速を落とすサイン。

人混み・濡れた床・砂利道は小股で安定重視に切替。

– 休憩の合図
– 「ベンチで60秒休みます」「日陰に移動して水分補給」。

事前に休憩ポイント(駅ベンチ、カフェ、日陰)を持っておくと安心。

– 交差点・信号
– 青の残時間を見て無理に渡らない。

渡る時は「やや速め」に切替、渡り終えるまで声で伴走。

「残り半分、順調です」。

場面別の具体的なやり方

– 階段
– 事前に上り下り、段数、手すり、有無を告げる。

「下り12段、手すり右、2段目が高い」。

降りの最後は段差ゼロを明確に「最後の段、終わりました」。

– スロープ・段差
– 勾配や長さを伝える。

「ゆるやかに5メートル上り」。

踵が引っかかる短い段差は特に予告。

– 狭い通路・工事区間
– 縦列移動+肩をすぼめる合図。

ケーブルやコーンは早めに回避。

「工事、足元ゴムマット、少し凸凹」。

– ドア・改札
– 押す/引く、開く向き、スピードを明確に。

自動改札は幅・ICタッチ位置。

「ICは右、タッチ後すぐ進みます」。

– 駅ホーム
– 黄色い点状ブロックの内側を歩行。

ホーム端までの距離を常に共有。

「端まで1メートル」「列ができます、後方に並びます」。

– バス・電車の乗降
– 階段段数、段差・隙間、手すりの位置。

車内では空席の方向と席の形状(ロング/クロス、優先席)を簡潔に。

「進行方向左側に空き、ロングシート、手すり前」。

– エスカレーター・エレベーター
– エスカレーターが苦手なら原則エレベーターに切替。

やむを得ず使うときは、乗り降りの直前直後だけ集中して声かけ。

– 横断歩道・自転車
– 音や速度変化を知らせる。

「右から自転車、減速していますが近いので待ちます」。

見通しの悪いT字路は特に慎重に。

練習と振り返り(習熟を早めるコツ)

– ミニドリル
– 自宅周辺で「止まる・再開・右左折・段差」の合図だけを短時間で繰り返し練習。

身体記憶になると本番で混乱しない。

– フィードバックの習慣
– 行程の区切りごとに「声かけの早さ/量」「ペース」の満足度を10点満点で相互評価。

次に直せる具体(例 段差前にもう一歩早く等)を一つだけ決める。

– チェックリストの活用
– 出発前 合図の取り決め、休憩計画、持ち物(白杖、サングラス、飲水、モバイルバッテリー)。

– 帰着後 ヒヤリハットの共有(どの場面で情報が遅れたか、合図が伝わりにくかったか)。

根拠・背景(なぜこの方法が有効か)

– 標準的なガイドテクニック
– 視覚障害者の手引きにおける「上腕保持・半歩先導・二重提示(声+触覚)」は、国内の同行援護従業者養成研修や視覚リハビリテーションの教材で一貫して推奨されている基本技術です。

身体の接点が肩~肘付近に限定されることで体勢が安定し、方向転換や段差の入力が効率的に伝わります。

– 予測可能性と安全
– 情報を「早め・短く・具体」にすることで、利用者が次の動作を予測しやすくなり、転倒・衝突のリスクが低下します。

段差や階段での「事前告知+段数・手すり情報」は足運びの準備を促し、踏み外しを防ぐ効果があります。

– 二重化の利点
– 都市環境では騒音や逆光などで単一モダリティの情報が欠落しやすいことから、声と触覚を重ねる二重化が誤解を減らします。

特に危険停止など重要合図をタップで標準化しておくと、緊急時の反応時間が短縮します。

– 確認のループ
– 医療・航空・救助の現場で確立された「指示→復唱→確認」の方法は、誤解による事故を減らす一般的手法で、移動支援でも有効です。

短い復唱(「右に曲がります」「はい、右」)は負担が小さく効果が高いです。

– 個別化・環境適応
– 視力・視野・眩しさ感受性・体力は個人差が大きいため、出発前の合意形成と経路中の微調整が必須とされます。

ペースの個別化と休憩計画は疲労由来のヒヤリハットを減らします。

– 国内外の推奨
– 厚生労働省の「同行援護従業者養成研修」のテキストや、視覚障害リハビリテーション協会、日本ライトハウス等が示すガイドヘルプ技術では、上記と同趣旨の手引き法(利用者は従業者の上腕を持つ、二重の合図、階段やエスカレーターでの事前告知、狭所での縦列化)が推奨されています。

海外でも、Guide DogsやRNIB等のSighted Guide Techniqueが同様の原理を示しています。

よくあるつまずきと対処

– 声が遅れる
– 2~3歩手前を守るため、地面の変化(点字ブロック、影、床材)を合図のトリガーにする習慣をつける。

– 合図が強すぎる/弱すぎる
– タップは痛みにならない強さで、一貫した回数(停止は2回など)に統一。

強さ・回数を出発前に確認。

– 説明が長すぎる
– 危険情報を先に、景色の説明は安全が確保されてから。

句読点代わりに小さな間(0.5秒)を入れると聞き取りやすい。

– 引っ張ってしまう
– 腕の接点は「方向を伝えるためのヒンジ」と意識。

体重移動で示し、力で引かない。

– 自転車への対応
– 音が小さく接近が読みづらい。

路肩側に寄る前に必ず「寄ります」を告げ、無理な回避をしない。

安心を高める小さな工夫

– 視環境の調整 帽子・サングラス・遮光眼鏡で眩しさを軽減。

雨天は滑りやすい靴底を選ぶ。

– 服装・見えやすさ 従業者は明るい色や反射材を選ぶと、低視力の方が位置を把握しやすい。

– 荷物の位置 手引き側と反対の手で荷物を持ち、接点を安定。

傘は利用者側に傾けない。

– 白杖併用 必要に応じて併用し、足元情報を補完。

速度をやや落として情報統合しやすく。

まとめ
– 合図は「標準化(止まる・再開・曲がる・段差)」「二重化(声+触覚)」「緊急合図の取り決め」が鍵。

– 声かけは「早め・短く・具体」、方向は統一した語彙で。

安全情報を最優先に。

– 歩行ペースは半歩先導で個別化し、環境や体調で柔軟に調整。

休憩を計画的に。

– 出発前のすり合わせと、移動中の確認のループ、到着後の振り返りが、次回の安心につながる。

根拠については、国内では厚生労働省の同行援護従業者養成研修テキストや視覚障害リハビリテーション分野の教材で、上腕保持による手引き、段差・階段での事前告知、狭所での縦列化、声かけの具体化とタイミング、確認のループなどが基礎技術として一貫して示されています。

国外でもSighted Guide Technique(英国RNIBやGuide Dogs等)が同様の原理を推奨しており、これらはオリエンテーション&モビリティ(O&M)の実践に根差した普遍的な方法です。

これらの方法は、予測可能性を高めて驚きと誤操作を減らし、触覚・聴覚情報を補完的に使うことで環境変動に強く、転倒や衝突のリスクを低減するという合理的根拠に基づいています。

段差・混雑・騒音などのリスクに備える安全対策の要点は何か?

以下は、同行援護で安心して外出するための安全対策の要点を、段差・混雑・騒音などの具体的リスクにフォーカスして体系的にまとめたものです。

実務で使える行動レベルのポイントと、背景となる根拠・考え方も併記します。

外出前の準備(安全の8割は事前で決まる)

– 目的・優先順位の共有
– 外出の目的(受診、買い物、余暇など)、「安全>到着時間」の優先を明確化。

– 休憩の頻度、混雑回避のための迂回可否、エレベーター優先の合意などを事前に取り決める。

– 情報収集とルート設計
– バリアフリールート(段差回避、エレベーター位置、ホームドア有無)を事前確認。

駅・施設のサイト「バリアフリー情報」「フロアマップ」を活用。

– 混雑予測(検索アプリの混雑度、イベント開催、通勤ラッシュ)を避ける時刻設定。

– 工事・騒音源(道路工事、祭事)や天候(雨・強風・猛暑)もリスクとして計画に織り込む。

– 合図とコミュニケーションの取り決め
– 基本の声かけ文言を統一 「止まります」「右へ曲がります」「10センチ上がります」「狭くなります」など短く具体的に。

– 騒音下のバックアップとして、前腕への軽いタップや圧での合図(例 停止=二回タップ)を相互同意のうえで設定。

– 装備・持ち物
– 反射材付きの衣服・白杖、雨具(視界と足元確保のためレインハット推奨)、滑りにくい靴。

– スマホの緊急連絡先・医療情報・ヘルプマーク/カード、携帯充電。

– 耳は環境音を聞く必要があるため、ノイズキャンセルは原則避け、必要時は骨伝導イヤホンや軽度の耳栓(会話と環境音が確保できるタイプ)を慎重に。

根拠 
– 同行援護従業者養成研修(厚生労働省ガイドライン)や視覚リハ(O&M)の標準では、出発前の危険予知・環境把握・合図の取り決めを必須の基礎として位置付け。

– 国交省の移動等円滑化(バリアフリー)情報は経路選定の実務根拠となる。

基本の手引き技法と歩行原則

– 立ち位置・歩速
– ガイドは半歩前、利用者はガイドの肘〜前腕を軽く保持(力で引かない)。

歩速は利用者基準で、段差前後は減速・一時停止。

– 声かけの具体性
– 方向・距離・高さ・幅を短く具体化(例 「3メートル先から緩い上り」「縁石2センチ上がります」「右に90度曲がります」)。

– 狭路・ドア・障害物
– 狭い通路はガイドの腕を背中側に引いて一列に。

ドアは「開く方向」「押す/引く」「戸袋位置」を事前告知。

回転ドアは原則回避。

– 階段・スロープ
– 階段では「上り/下り」「手すりの有無と側」「段の開始/終了」を必ず告知。

最初と最後は一歩手前で停止してから動き出す。

– エスカレーターは事故リスクが高く、原則エレベーター又は階段を推奨。

根拠 
– O&Mの定石(腕手引き法、階段・ドア誘導の手順)は国内外の視覚障害者歩行訓練で標準化。

– エスカレーターは国内事故情報(国民生活センター等)やガイド犬協会の注意喚起でも回避が推奨。

段差・ホーム隙間・路面リスクへの対策

– 細かな段差でも数値化して告知(例 「段差5センチ上がります」)。

微小段差はつま先ひっかけ事故の主要因。

– 階段は踊り場ごとに区切って案内。

降りは特に減速。

– 駅ホームは端から黄色い点状ブロック一列内側を歩き、進入列車時は停止して壁側に寄る。

ホームドア無は要警戒。

– プラットフォーム隙間やバス乗降時は「段差+隙間」の二重リスクを口頭で。

乗車前に車掌・運転士へ声かけで停止位置を調整してもらう。

– 濡れた床・マンホール・タイル・落葉は滑走リスクが高いので進入角度と歩幅を小さく。

雨天は斜路・白線・点字ブロックの滑りに注意。

根拠 
– 鉄道事業者の安全資料でホーム端・隙間・進入列車時の事故が多いことが示され、注意喚起が徹底。

– 足元由来の転倒は高齢・障害の外出事故で最多要因(消費者安全調査委員会、自治体の転倒事故分析)。

混雑(群衆)への対策

– 時間・経路で回避 通勤ピーク・イベント終演直後を避け、広い動線・複数出入口があるルートを選ぶ。

– 体勢・ポジショニング 
– 人流に逆らわない。

圧が強い時は「胸を張らず肘を畳む・顔を守る」姿勢で、壁・柱際など圧の弱い帯へ退避。

– はぐれ対策として、合図ワード「離れます/ここにいます」と停止ルール、非常集合地点(入口A横の柱等)を事前設定。

– 決して屈まない・拾い物をしない(転倒→将棋倒しのリスク)。

無理にショートカットせず、流れに沿いながら徐々に外周へ。

– 駅では係員支援を積極的に要請。

乗換えやホーム移動は業務誘導が最安全。

根拠 
– 群衆安全の原則(群集圧・ボトルネック回避、外周退避)は国内外の群衆事故検証で確立。

– 鉄道各社の「声かけ・サポート運動」や駅係員誘導は公式サービスとして提供。

騒音(工事音・交通騒音・施設BGM)への対策

– 情報伝達を「短く・近距離・正面側から」。

騒音下では余計な説明を省き、行動前に要点のみ伝える→移動後に補足。

– 事前にタクティル合図(タップ)と音声の二重化。

騒音帯では一旦安全地帯(壁際・ポケット空間)に寄ってから指示。

– ルート上の常設騒音源(高架下、アミューズメント施設前)を避ける。

信号の音響装置が聞き取りにくい交差点は押しボタン確認や別横断を検討。

– 聴覚遮断の危険性に配慮。

ノイズキャンセルは原則使用せず、必要時は環境音が入る設定に限定。

根拠 
– 視覚障害の歩行では聴覚・触覚が主要情報源であり、騒音は知覚負荷と誤判断を増やすことがリハビリ実践で知られるため。

– 音響式信号機は騒音環境では聞き取り低下(自治体のバリアフリー検討資料)—経路選択の判断材料。

交通リスク(交差点・自転車・静音EV)への対策

– 右左折車優先の誤認防止 青でも一拍置き、車の動線・エンジン音を確認。

ドライバーと目を合わせにくい前提で、確実な停止を待つ。

– 歩道上の自転車対策 建物側を歩く、交差点直前は速度を落とし白杖を前方に明確に提示。

電動キックボード等は静音・加速が急なので特に減速。

– 信号待ちは路肩から30〜50センチ内側で。

車道側に背を向けず、横向きで情報を取りやすく。

根拠 
– 警察庁統計で右左折巻き込み・自転車関連の歩行者事故が顕著。

EV/PHVの静音は歩行者検知性低下が国交省・自動車技術会で議論済み。

天候・環境(雨・雪・暑さ・夜間)

– 雨天は視覚情報が他者にも低下し、車の制動距離延長。

余裕ある横断・速度管理、滑りやすい材質の回避。

– 猛暑時は15〜20分ごとに日陰休憩・水分補給。

熱中症リスクは感覚に頼りにくいためタイマー管理。

– 夜間は反射材・点灯式アクセサリで被視認性を上げる。

路面凹凸の視認が周囲にも難しくなる前提でより保守的に。

根拠 
– 熱中症対策は環境省等の指針。

雨天・夜間の歩行安全は交通工学・ヒューマンファクターの基本原則。

緊急時対応フロー

– 転倒時 まず二次災害防止(周囲の人流・車両を止める/避ける)→痛み部位確認→無理に起こさず本人合図で段階的に起立。

頭部打撲・出血は救急要請。

– はぐれた場合 移動を止め、事前合意の合流地点へ。

通話が困難なら駅係員・店舗スタッフに支援要請。

– パニック・過敏 刺激源から離れ、低刺激の場所へ一時退避。

深呼吸・水分・時間を確保。

根拠 
– 災害・救急の初動原則(二次事故防止優先)。

駅・商業施設の支援要請は事業者マニュアルでも想定済み。

記録と学習(ヒヤリハットの活用)

– 外出後に「ヒヤリハット」を簡潔に記録(場所・状況・要因・対策)。

次回ルートや声かけを更新。

– KYT(危険予知トレーニング)を出発前に30秒だけ実施 「今日は何が危険?
どう防ぐ?
役割は?」を声に出して確認。

根拠 
– 産業安全・介護現場で実証されているリスク低減手法(KYT・ヒヤリハットのフィードバックループ)は同行援護にも有効。

実務で使える「声かけ」テンプレート例
– 方向・動作 「右に曲がります」「ゆっくり進みます」「止まります」
– 段差・路面 「段差5センチ上がります」「下り階段、手すり右、10段です」「床が滑りやすいです」
– 混雑・狭窄 「ここから狭くなります、一列になります」「人が多いので歩幅小さくします」
– 騒音時 「工事音が大きいので一度止まります。

静かな所へ移動してから説明します」

関連する主な根拠・参照の出所
– 厚生労働省 同行援護従業者養成研修(一般・応用課程)ガイドラインおよび研修テキスト 手引き技法、コミュニケーション、安全配慮が体系化。

– 視覚障害リハビリテーション(O&M)標準実践 腕手引き、階段・ドア・狭路の誘導、音情報の扱い。

日本ライトハウス、日本盲導犬協会等の教材・講習で一貫。

– 国土交通省 バリアフリー関連(移動等円滑化法)と交通事業者のバリアフリー情報 エレベーター位置、ホームドア情報、代替ルート設計の根拠。

– 警察庁交通事故統計・国民生活センターの事故情報 歩行者の転倒・ホーム事故・エスカレーター事故・自転車接触の実態。

– 群衆安全に関する国内外の事例分析 ボトルネック回避・外周退避・停止判断などの群集行動原則。

– 環境省・自治体の熱中症対策指針 外出時の休憩・水分・服装指針。

まとめ
– 段差には「数値化・一時停止・手順化」、混雑には「時間と動線で回避・外周退避・係員活用」、騒音には「情報の二重化(声+タクティル)と安全地帯での伝達」が基本戦略です。

– 事前準備と合図の標準化、保守的なルート選択、現場での「止まって考える」癖、振り返りの蓄積が、安全と安心を大きく高めます。

以上を土台に、利用者の歩行スキル・感覚過敏・体力に合わせて個別最適化すると、同行援護の安全性と快適性がさらに高まります。

交通機関と経路はどう選べば安心かつスムーズに移動できるのか?

以下は、同行援護で安心して外出する際に「交通機関と経路をどう選ぶと安全でスムーズか」を考えるための実践的なポイントと、その根拠の説明です。

鉄道・バス・タクシーなどの選び方、経路の評価軸、事前準備、当日の運用まで順を追ってまとめています。

基本方針(経路選定の優先順位)

– 乗り換え回数を最小にする
– プラットホームドア(可動式ホーム柵)やエレベーター等のバリアフリー設備が充実した駅・路線を優先
– 人の流れと交錯しにくい、歩行距離・高低差の少ない動線を選ぶ
– 混雑する時間帯・駅を避ける(やむを得ない場合は指定席・優先席に近い車両位置を選ぶ)
– 万一の運行乱れに備え、代替ルートと連絡先を用意

交通機関ごとの選び方
鉄道

– 路線選択 ホームドアの整備率が高く、乗り換えが少ないルートを優先。

郊外乗り入れで直通がある場合は直通を選ぶと乗り換えリスクを下げられます。

– 駅設備 「駅のバリアフリー情報」や「駅構内図」で、エレベーター・点字ブロック・誘導チャイムの有無、改札からホームまでの動線幅を事前確認。

乗換駅は同一ホーム・同一フロア乗換の経路を重視。

– 車両位置 エレベーター・エスカレーターに近い号車位置を事前に特定(各社の「乗車位置案内」や乗換案内アプリの車両案内機能)。

到着後の動線が短くなり、混雑回避にも有効。

– 便種選択 急行・快速より各駅停車の方が乗降の余裕があり、停車時間も長めで案内が確実。

長距離は指定席・グリーン席・新幹線の指定席を活用し、移動による転倒・迷走リスクを低減。

– 駅係員の連絡 事前に駅へ介助依頼(乗降駅・乗換駅・到着時刻・人数・障害特性)を伝えると、ホーム上の安全確保や乗換誘導がスムーズ。

同行援護と駅係員の併用は複雑駅で特に有効。

路線バス・コミュニティバス
– 車両 ノンステップ(低床)車両、車いすスペースの有無、運転席側の案内支援の姿勢を確認。

小型コミュニティバスは停留所が近く歩行距離短縮に有利。

– 乗降方法 先払い・後払い、前乗り・後乗りは地域差が大きい。

初回は時刻表サイトや事業者ページで方式を確認し、乗車時に運転手へ目的地・案内希望(停留所直前の声かけ)を依頼。

– 混雑時間帯を避ける 通勤通学時間は立位での転倒リスクが上がるため、時刻をずらすか、1本遅らせる余裕を計画。

タクシー・福祉輸送
– door-to-doorで安全性が高く、初めての場所や夜間・荒天時に有効。

福祉タクシー券の有無、車両タイプ(スロープ・回転シート等)を事前確認。

– 予約時に視覚障害・誘導方法・行き先の入り口(正面・搬入口など)を共有。

降車位置を施設側と取り決めると迷いにくい。

経路の評価軸(スコアリングの考え方)

– 乗換回数(少ないほど安全)
– 乗換動線(同一ホーム=高評価、上下移動あり=減点)
– ホームドア設置(全駅設置ルートを高評価)
– エレベーター・多機能トイレの有無(長距離なら重要度大)
– 歩行距離(駅内の移動が300m以下を目安)
– 混雑予測(ピーク帯回避、イベント日回避)
– 情報の確実性(構内図・係員支援の事前確約の有無)
– 代替性(運行乱れ時のバックアップが用意できるか)

情報収集のツールと使い方

– 国土交通省「らくらくおでかけネット」 駅・空港・バスターミナル等のバリアフリー情報の横断検索が可能。

経路比較の前提資料に有効。

– 鉄道各社の公式サイト 「駅のバリアフリー情報」「駅構内図」「のりば案内」「乗車位置案内」を活用。

ホームドアの有無、工事予定、エレベーター点検情報も確認。

– 乗換案内アプリ(NAVITIME、駅すぱあと、Google マップ等) バリアフリールート・エレベーター優先・乗車位置案内・混雑予測表示を有効化。

– 運行情報サービス 各社のメール配信や公式SNS、Yahoo!路線情報で遅延・運休の早期把握。

同行援護では当日朝の再チェックが重要。

– 自治体・警察の信号情報 音響式信号機の整備状況や押しボタン式信号の設置情報を確認できる自治体もある。

横断点の安全性評価に活用。

事前連絡・予約の実務

– 鉄道の介助依頼 できれば前日までに乗降駅へ電話。

内容は日時、列車、人数、特性、集合場所(改札・きっぷうりば)を明確に。

事業者が異なる乗換は双方に連絡しておくと待ち時間が減る。

– バスの相談 ルートが複雑な場合や混雑が見込まれる場合は営業所に事前相談。

停留所の位置や安全な待機場所を確認。

– 予約席 新幹線・特急は指定席、一般列車でもグリーン車等を検討。

座席確保で立位移動を最小化。

– 余裕時間 乗換は通常検索結果+10〜20分のバッファを標準化。

係員誘導や混雑でのペースダウンを吸収。

当日の運用と安全動線の工夫

– ラッシュ回避 730〜930、1730〜1930のピークは極力回避。

やむを得ない場合は始発駅寄りの車両や女性専用車(該当時間帯)など混雑が比較的薄い位置を選択。

– 待機位置 ホームでは点状ブロック後退側に立ち、同行援護従業者が線路側に位置してガード。

柱・壁近くで流れを避ける。

– 歩行順序 先導方式か並走方式かを状況で選択。

人流が速い場所では並走、狭所・段差前は立ち止まり事前説明。

– 音情報の活用 発車メロディ、接近放送、車掌のアナウンスで乗車可否を再確認。

バスは運転手に停留所直前の声かけを依頼。

– チケット・IC IC残高は前日に十分にチャージ。

改札は広幅通路を利用し、列の圧力を避ける。

シーン別の配慮

– 大規模ターミナル 駅係員の併用を基本に。

同一社内での乗換に限定する、または1本遠回りでも小規模駅を使う判断が安全。

– 雨・雪・夜間 屋内通路・地下通路を優先。

滑りやすい床材(石・金属)や白杖の反響が弱い広場はスローダウン。

– 初めての目的地 事前に入口の写真・ランドマーク・建物の音(送風・自動ドア)情報を取得。

タクシーのラストワンマイル併用も有効。

最低限のチェックリスト

– 乗換回数は1回以下か
– 全乗換駅にエレベーターがあるか
– ホームドアの有無を確認したか
– 係員支援の連絡を済ませたか
– 車両位置(エレベーター最寄り号車)を控えたか
– 代替ルートと連絡先(駅・タクシー)を控えたか
– 余裕時間10〜20分を入れたか

根拠(制度・技術・実務の裏付け)

– 障害者総合支援法と同行援護の位置づけ 同行援護は視覚障害者の外出時の安全確保・情報支援・移動支援を担うサービスで、厚生労働省の養成研修テキストや運用通知では「事前の環境把握」「危険予知」「公共交通機関での連絡調整」が重要とされる。

よって駅係員との連携、ルートの簡素化、余裕時間の設定は制度上の標準的実務に合致。

– バリアフリー法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)と移動等円滑化基準 駅のエレベーター、点字ブロック、案内設備の整備が努力義務・義務化され、国土交通省は「らくらくおでかけネット」で設備情報を提供している。

設備の有無を事前確認することは合理的配慮の活用に直結。

– ホームドアの安全効果 国土交通省や鉄道各社の公表資料では、ホームドアはホーム上の転落・接触事故を有意に減少させる対策として位置づけられている。

視覚障害者のホーム転落事故は混雑や曲線ホームで発生リスクが高く、ホームドア設置駅の選択は合理的なリスク低減につながる。

– 混雑回避の必要性 国交省や各社の「混雑率」公表値・安全啓発では、ピーク時は接触・転倒リスクが上昇し、案内放送の聴取困難や人流での誘導困難が起きやすいとされる。

時間帯シフトや指定席の活用はリスクコントロールの観点から妥当。

– 情報ツールの活用 乗換案内アプリのバリアフリールート機能、Googleマップの車いす対応ルート、鉄道各社の構内図・乗車位置案内は、エレベーター優先や動線短縮を実現する実証的手段。

実務上、これらを用いた車両号車選択は歩行距離・高低差の削減に寄与。

– 障害者差別解消法の合理的配慮 公共交通機関事業者は合理的配慮の提供が求められており、駅係員による誘導、バス運転手の声かけ、案内表示の配慮等の依頼は法的枠組みに沿う。

まとめ(実行ステップ)

– 目的地・日時・制約条件を整理(乗換最小、混雑回避、設備優先)
– ツールで候補ルートを3本出し、設備と混雑でふるい込み
– 駅構内図で車両位置と動線を確定、余裕時間を付与
– 駅・事業者へ介助連絡、指定席・タクシーを予約
– 代替ルートと連絡先を手元に用意
– 当日は運行情報を再確認、ホームでは安全待機、音情報と係員支援を活用

以上の流れに沿えば、同行援護での外出時に、交通機関と経路の選択を安全かつスムーズに最適化できます。

特に「乗換の簡素化」「ホームドア優先」「駅係員との連携」「車両位置の事前特定」「混雑時間帯の回避」の5点は、実務と制度の両面で根拠が強い中核対策です。

トラブルや体調不良に備えた持ち物・連絡体制・代替プランはどう準備する?

以下は、同行援護で安心して外出するために、トラブルや体調不良に備える「持ち物」「連絡体制」「代替プラン(バックアップ計画)」の作り方を、実務で使えるレベルまで落とし込んだ具体策です。

最後に根拠(参照の拠りどころ)もまとめます。

持ち物(リスク別チェックリスト)

– 身分・医療情報
– 健康保険証(原本または鮮明なコピー)、公費受給者証等
– 緊急連絡カード(名・住所・緊急連絡先・主治医・服薬情報・アレルギー・持病・支援の留意点を簡潔に)。

スマホの緊急情報(ロック画面から見られるMedical IDや緊急連絡先)も必ず設定
– 障害者手帳、同行援護受給者証(必要に応じて)
– 連絡・位置情報
– スマホ(連絡先を短縮ダイヤル化、位置情報の一時共有設定、緊急通報機能の確認)
– 予備バッテリー(十分な容量)とケーブル、モバイルWi-FiやeSIMのバックアップ
– 金銭・決済
– 現金(少額紙幣・硬貨)、交通系IC、タクシー代を別財布で確保。

自治体の福祉タクシー券がある場合は携行
– 移動・視認性・安全
– 白杖(予備チップ)、靴は滑りにくいもの、夜間は反射材バンド
– 雨具(折りたたみ傘・レインコート)、季節対策(帽子・手袋・カイロ、夏は冷感タオル・扇子)
– 体調管理・衛生
– 常用薬(処方どおり、予備含む)、頓用薬は医師の指示があるもののみ
– 水分(経口補水液等)と軽食(低血糖対策にブドウ糖やゼリーなど、持病に合わせ選択)
– マスク・手指消毒・ティッシュ/ウェットティッシュ
– ポケットサイズの応急キット(絆創膏、消毒綿、三角巾代替のバンダナ等)※医療行為は行わず、救急要請を優先
– 情報・ルート
– 行程表(目的地・経路・時刻・休憩・トイレ位置・避難所/目印・代替案)
– オフライン地図・乗換案内(音声読み上げ対応アプリ)、主要駅のバリアフリーマップ
– その他
– 使い慣れた補助具(ルーペ、点字ディスプレイ、骨伝導イヤホン等。

周囲音が拾える形が望ましい)
– 予備マスク、タオル、ゴミ袋、名札(必要に応じ)
– 万一の合図に使えるホイッスル

連絡体制(誰が、いつ、何で、どの順に連絡するかを可視化)

– 事前に合意する連絡フロー
– 緊急時(生命・身体の危険) 119→利用者家族・事業所管理者→市区町村・事故報告の順
– 迷子・トラブル時(緊急性中) 事業所管理者→家族→施設・駅係員・警察(110)を状況に応じ選択
– 遅延・予定変更(緊急性低) 家族→事業所→関係先(病院・店舗・訪問先)
– 連絡先リスト
– 家族・キーパーソンの優先順位、事業所管理者/緊急当番、通院先(診療時間外の案内含む)、訪問先の代表番号、最寄り警察署・消防署の代表、タクシー会社
– 定時連絡・見守り
– 出発・到着・中間チェックポイントでの「チェックイン」連絡
– 位置情報共有の時間限定設定(同行者のスマホ故障に備え、第三の受け皿も検討)
– 情報共有と同意
– 健康・アレルギー・服薬・緊急搬送に関する事前同意書
– 個人情報の取り扱い範囲・保存・共有先を文書化し、利用者の意思確認

代替プラン(計画B/C)を事前に設計

– 目的地・経路の代替
– 階段しかない出入口の回避ルート、エレベーター停止時の別ルート
– 人混みが激化した場合の一時退避場所・時間帯シフト
– 交通遅延・運休時の別路線・バス・タクシー移動と費用目安
– 天候・季節リスク
– 悪天候時は「前日判定・当日判定」の二段階で中止・延期を判断
– 猛暑日は滞在時間短縮、屋内中心、休憩頻度・給水ルールを変更
– 体調変化時の行動基準
– 症状レベル別の分岐(軽度 休憩・補水/中等度 予定短縮・帰宅/重度 119)
– 既往症別の留意(例 低血糖既往→即ブドウ糖摂取・再評価・改善なければ救急)
– 目的の代替活動
– 混雑・設備不良時の同等目的(買い物→別店舗、散策→屋内ギャラリー等)

事前準備(外出前72〜24時間)

– リスクアセスメント
– 行程の段差・混雑・音環境・照度を予測。

駅・施設のバリアフリーマップ、フロア図を確認
– 予約・問い合わせ
– 店舗・施設に事前連絡し、バリアフリー経路、誘導依頼、混雑時間を確認
– 病院・行政手続きは必要書類・受付締切の確認
– 健康チェック
– 当日の体調自己申告項目(睡眠、食事、服薬、痛み、めまい、発熱等)
– 気象情報(高温注意・大雨警報)を踏まえ服装・補水計画を調整
– 合同ブリーフィング(5〜10分)
– 目的・優先度、合図・声掛けルール、危険時の中断合意(セーフワード)、連絡フロー最終確認

当日の運用(現場での安全運転術)

– ペース配分
– 45〜60分に1回は小休憩、トイレ位置を先読み。

炎天下・極寒下は休憩頻度を増やす
– 誘導・環境調整
– 騒音・強光・人混みは回避、音情報を邪魔しないデバイス選択(片耳・骨伝導など)
– 記録
– ヒヤリハット(転倒しかけ、接触など)を簡潔にメモ。

後日、次回の対策に反映

想定トラブル別の即応ガイド

– 転倒・ケガ
– 危険を除去→安静→出血の圧迫止血(可能範囲)→体位保持→119通報。

意識・呼吸に異常があれば直ちに通報とAED要請。

無理な移動は避ける
– 体調不良(めまい・吐き気・熱中症兆候)
– 日陰・涼所で座位、衣服緩め、補水。

改善なければ予定中止→帰宅または受診。

高体温・意識障害は119
– 低血糖が疑われる(ふるえ・冷や汗・空腹感・集中困難など)
– すぐに糖分補給(ブドウ糖・甘い飲料)。

10〜15分で再評価。

改善なければ医療相談/受診。

既往症・指示書に従う
– 迷子・離脱
– その場で待機の合図を再確認。

人が多い場は「集合地点(ランドマーク)」を事前設定。

駅係員・施設スタッフの協力を求める
– 交通トラブル(運休・大幅遅延)
– 代替ルートへ切替、困難なら安全な屋内で待機→タクシー切替。

事業所・家族へ即時連絡
– 通信障害・電池切れ
– 合流・避難の合図(時刻と場所)を事前に決めておく。

モバイルバッテリーで復旧
– トラブル相手との応対
– 単独での口論回避。

施設スタッフ・警備・警察にエスカレーション。

ボディカメラ的録音は個人情報・各施設規約に配慮

終了後の振り返り(PDCA)

– 記録
– 体調・出来事・ヒヤリハット・連絡の実施状況・所要時間差を記録
– 是正
– 持ち物の入替(不要を減らし必要を補充)、代替ルートの精緻化、連絡先の更新
– 共有
– 事業所内カンファレンスで情報共有、次回のケア計画に反映

実務のコツ(見落としがちなポイント)

– タクシー代や緊急費用は最初から「使ってよい枠」を合意
– 申請系外出は締切・受付時間の「バッファ」を2段階で確保
– 現地での席や位置は「出入口近く・人流の少ない側」を選択
– アプリはオフラインでも使えるものを1つは用意
– 冬は足元の冷え対策、夏はネッククーラー等で核心温上昇を抑制
– 支払い・サインは「確認→読み上げ→実行」の二人称確認で誤り防止

根拠・拠りどころ(考え方の裏付け)

– 法令・基準
– 障害者総合支援法および指定障害福祉サービスの人員・設備・運営基準(厚生労働省令)では、事業所における運営規程の整備、緊急時対応、非常災害対策、事故発生時の報告・再発防止が求められています。

同行援護は同法に基づく障害福祉サービスであり、事故対応や連絡体制の整備は制度上の要請です
– 障害福祉サービス等の事故報告に関する通知(厚生労働省)により、事故発生時の連絡・報告の流れと記録化が求められます。

連絡フローや記録の徹底はこの要請に合致
– 研修・ガイドライン
– 同行援護従業者養成研修テキスト(厚生労働省監修)には、危機管理、緊急時対応、誘導の安全技術、情報提供と同意、記録の重要性が明記されています。

今回の事前同意、セーフワード、ヒヤリハット記録、経路事前確認はテキストの趣旨と一致
– 介護・福祉領域のリスクマネジメント指針では、KYT(危険予知)やPDCA、ヒヤリハット共有による再発防止が標準的手法です
– 行政の安全・健康情報
– 環境省「熱中症予防情報サイト」、気象庁の警報・注意報は外出可否判断・水分補給・休憩頻度の根拠
– 消防庁・総務省の救急車適正利用・119番通報の手引きは、重症判定時の通報優先、状況伝達の要点を示しており、体調急変時の対応に整合
– 新型コロナを含む感染症対策について厚労省の基本的対処方針は、マスク・手指衛生・混雑回避等の妥当性を支えます
– 個人情報・同意
– 個人情報保護法およびガイドラインに基づき、健康情報の取り扱いは本人同意・目的明確化・必要最小限が原則。

緊急連絡カードやスマホの緊急情報設定は、適法かつ実効性の高い情報共有手段
– バリアフリー・移動
– 国交省や主要鉄道事業者のバリアフリー整備方針では、駅係員誘導、エレベーター・多機能トイレの情報公開が進められており、事前確認・代替ルート策定の実務根拠となります

すぐ使えるテンプレ(抜粋)

– 緊急連絡フロー
– 生命の危険や意識障害・激しい痛み・大量出血→119→事業所管理者→家族→必要な事故報告
– 遅延・予定変更→家族→事業所→訪問先
– 当日チェック
– 体調(睡眠・食事・服薬・痛み・発熱)/ 気象 / 充電 / 予備電源 / 現金・IC / 保険証 / 緊急カード / 行程表 / 常用薬・水分
– セーフワード例
– 「少し休みたい」→近くで休憩
– 「予定を短く」→目的を優先順位で選択し短縮
– 「すぐ帰りたい」→直近の安全ルートで帰途へ

最後に
同行援護の外出は「準備7割・運用2割・振り返り1割」で安全性が大きく変わります。

持ち物は軽量・必要最小限を保ちつつ、連絡体制は一本化・可視化、代替プランは「経路」「目的」「時間」の3層で用意するのがコツです。

事業所の運営規程・自治体の指導や主治医の指示がある場合はそれを最優先に、個々の特性(見え方・音への敏感さ・既往症・疲労しやすさ)に合わせて調整してください。

必要であれば、実際の行程表や連絡フローの雛形も作成します。

【要約】
外出の成否は事前計画が鍵。目的と優先順位、日時・所要/予備、行程と代替、集合/解散、バリアフリー、休憩/トイレ/食事、予約・支払い、持ち物、体調とリスク、手引き約束、役割/連絡、中止基準、制度確認を具体に合意。情報共有は本人同意の最小限を原則。利用者⇄従業者は詳細、事業所は要約、家族は安全情報中心、目的地・交通は配慮依頼のみ、第三者は共有しない。