コラム

訪問介護でできること徹底ガイド 食事・清潔保持・排泄/移乗・生活援助・通院同行の具体例

食事の準備や食事介助はどんな形で支援してもらえる?

ご質問の「訪問介護での食事の準備や食事介助は、どんな形で支援してもらえるか」について、介護保険制度上の位置づけ(根拠)も含めて、できる限り具体的に整理します。

自治体や事業所の運用で細部が異なることはあるものの、厚生労働省の基準・通知に沿った一般的な実務像です。

全体像 食事に関する支援は「生活援助」と「身体介護」の組み合わせ

– 生活援助の範囲
– 調理、配下膳、後片付け、食器洗い、台所の衛生管理、買い物代行、食材の在庫整理・賞味期限確認など、「家事」を中心とした支援。

主に独居や同居家族の支援が困難な場合に提供されます。

– 身体介護の範囲
– 摂食・嚥下の介助、見守り、食事中の姿勢調整、声かけやペース配分、食形態調整(刻み食・ペースト食・とろみ付け等)、食後の口腔ケアの一部など、直接心身に働きかける介助。

– 実際の訪問では「生活援助+身体介護」を同一回で組み合わせることがよくあります。

例 入室後に姿勢づくり→食事介助→下膳と片付け→食材補充の買い物、など。

食事「準備」に関してできること(生活援助中心)

– 献立・食材の選定
– ご本人の嗜好、アレルギー、宗教・文化的配慮、医師・管理栄養士等から示された食事制限(減塩、エネルギー調整、たんぱく制限、嚥下食の段階など)を踏まえてメニューを組み立てます。

専門的な栄養処方そのものの決定は管理栄養士の所掌ですが、ヘルパーはその指示やケアプランの方針に沿って実行します。

– 買い物代行
– 指定された店舗や近隣のスーパーでの食材購入、レシートの保管・金銭管理(事業所の規程に基づく立替や預かり金の取り扱い)、重い荷物の搬入、冷蔵・冷凍・常温の適切な保管、賞味期限の点検、先入れ先出しの整理を行います。

– 調理
– 刻み食・ミキサー食・ソフト食、食材のやわらか加工(煮込み・とろみ付け)、温度管理(中心温度の目安や加熱不足の回避)、衛生管理(手指・器具・調理台の清潔保持、まな板・包丁の使い分け、生もの取り扱いの注意)を行います。

塩分や油分の調整、調味料の使い分けなども可能です。

– 配膳・環境整備
– 食卓やベッドサイドの整頓、すべり止めマットの設置、テーブルの高さ調整、必要な自助具(すくいやすい食器、滑り止め付きのスプーン等)の準備、適温での提供(やけど防止も含む)。

– 後片付け
– 食器洗浄、台所やシンクの清掃、ゴミの分別・廃棄、冷蔵庫の簡易清掃、次回に備えた下ごしらえの最小限の準備(ケアプランに位置づく範囲)など。

食事「介助」に関してできること(身体介護中心)

– 姿勢・ポジショニング
– 車いす・椅子・ベッド上いずれでも、嚥下に適した姿勢(基本は体幹を起こし頸部軽度前屈、片麻痺の場合は麻痺側への配慮)を整えます。

リクライニング角度やクッション位置の微調整も含みます。

– 摂食介助
– 一口量・ペースの調整、食具への盛り付け工夫、口唇閉鎖や舌運動を促す声かけ、交互嚥下(水分と固形物の交互)、とろみの粘度調整、むせ・湿性嗄声・咳込みの観察と中断判断、疲労への配慮、食事時間の確保。

– 認知症の方への働きかけ
– 視覚・嗅覚刺激での摂食誘導、単純明快な選択肢提示、食器の色コントラストの工夫、焦燥や立ち上がりへの安全配慮、食べ忘れ・食べ散らかしへの穏やかな誘導。

– 口腔ケア(前後)
– 食前の口腔湿潤や義歯の装着確認、食後のうがい・義歯洗浄・簡易な清掃(ヘルパーが実施可能な範囲)。

専門的口腔ケアや治療は歯科・歯科衛生士の所掌。

– 水分・栄養の記録
– 摂取量、残食、咀嚼・嚥下の状態、むせや咳、所要時間などを記録し、必要に応じてケアマネジャーや家族、訪問看護、主治医、管理栄養士等へ共有。

できること・できないこと(注意点)

– 家族分の調理は不可
– 介護保険の生活援助は「要介護者本人のための家事」が原則。

家族や来客の分の調理・配膳は算定対象外です。

本人の食事と区別が曖昧になる場合は事前に運用を確認。

– 作り置きの扱い
– 原則は訪問時間内に喫食する食事の準備が中心。

ただし安全性・必要性が高く、ケアプランや訪問介護計画に位置づけられ、衛生管理(急冷・冷蔵・再加熱手順)が担保できる場合、次の食事分程度までの作り置きが認められることがあります。

大量の作り置きや長期保存前提は不可。

– 医療的ケアに該当する行為は原則不可
– 経管栄養(胃ろう・経鼻)への注入、嚥下評価の実施、診療の指示に基づかない食形態変更などは医療職の領域。

経管栄養や喀痰吸引は、所定の研修を修了し登録を受けた者のみが実施でき、実施体制を整えた事業所に限られます。

多くのケースでは訪問看護が担当します。

– 同居家族がいる場合の生活援助
– 原則として同居家族が家事を担える場合は生活援助の提供は限定的。

家族の就労時間や障害等で家事が困難な事情が客観的に認められる場合に、必要最小限が認められます。

– 自費(保険外)サービスの活用
– 介護保険では不可の家族分調理、掃除の追加、買い物の広範囲化、長時間の作り置きなどは、事業所が用意する自費サービスで対応できることがあります。

利用の流れと計画・時間の考え方

– ケアマネジャーのアセスメント
– 嚥下機能、栄養状態、食事の自立度、生活環境を評価し、ケアプランに「食事の準備」「食事介助」の目標・頻度・時間帯を位置づけます。

– 訪問介護計画(事業所)
– サービス提供責任者が具体的手順(例 1130入室→姿勢づくり→摂食介助→口腔ケア→下膳・片付け→記録)を作成し、ヘルパーがそれに沿って実施します。

– 時間区分と算定
– 身体介護は短い単位区分から設定があり、生活援助は別区分です。

食事準備と介助を連続して行う場合、併せて算定される設計になります(具体の単位や金額は改定で変動するため、最新の告示・自治体公表資料で確認)。

安全・衛生・リスク対応

– 誤嚥・窒息リスク
– むせ込みが続く、声がガラガラになる、顔色不良、意識変容などの兆候があれば中止し、事業所の緊急時対応マニュアルに従って家族や訪問看護、主治医へ連絡、必要時は救急要請。

無理な口腔内掻き出しは避けます。

– 食中毒予防
– 手洗い、器具の消毒、加熱の徹底、冷却と再加熱のルール、賞味期限管理。

免疫力が低下した方では特に要注意。

– 金銭・貴重品
– 買い物代行の会計はレシート・精算書で明朗に。

鍵の保管、冷蔵庫や台所の整理は事前の合意と記録に基づいて行います。

– 情報共有
– 嚥下指示や食形態の変更は、ケアマネジャーを通じて医師・管理栄養士・訪問看護等の専門職と連携し、ヘルパーの独断で変更しないことが原則です。

ケース別の具体例

– 嚥下障害がある方
– 訪問開始時に姿勢調整→食事はやわらかめ・一口大→とろみ付き水分をスプーンで→2〜3口ごとに小休止→むせ確認→食後は座位保持をしばらく継続→口腔ケア→記録。

必要に応じて言語聴覚士や訪問看護と連携。

– 糖尿病や腎疾患での食事制限
– 医師や管理栄養士の指示に沿い、エネルギー量・塩分・たんぱく質量を調整。

調味料は計量し、惣菜は栄養表示を確認。

食べ残しや間食の傾向を記録し、専門職へフィードバック。

– 独居高齢者
– 食材の買い出しから調理、配膳、見守り、片付けまでを一連で実施。

水分摂取量のチェック、冷蔵庫の食材回転、常備菜の小分けなどを安全な範囲で行います。

– 同居家族がいて日中不在
– 家族の帰宅時間に合わせ、昼食の準備と見守り、夕食の下ごしらえ(必要最小限)を行い、食形態や注意点をメモで共有。

依頼時に伝えておくとスムーズな情報

– 好き嫌い・アレルギー・宗教上の禁止食品
– 医師や管理栄養士からの食形態・栄養指示の内容
– 使い慣れた調理器具・自助具、誤嚥しやすい食品の情報
– 買い物のルール(店・予算・決済方法・レシート保管)
– 鍵の受け渡し、冷蔵庫や調味料の使い方の可否
– 連絡先(家族、ケアマネ、訪問看護、主治医)と緊急時の優先連絡順

根拠(制度・基準・公的資料の考え方)

– 介護保険法
– 訪問介護は介護保険法に基づく居宅サービスで、ケアプランに沿って提供されます。

食事の準備(家事)は生活援助、食事介助は身体介護に該当。

– 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(厚生労働省令)
– 訪問介護事業所が整えるべき人員配置(サービス提供責任者等)、運営上の記録義務、利用者の尊厳の保持、安全確保、衛生管理などの基本的事項を定めています。

食事に関する支援もこれら運営基準に則って実施されます。

– 介護給付費算定に係る告示・通知(介護報酬の定義)
– 訪問介護の「身体介護」「生活援助」の定義や算定要件、同一訪問での組み合わせ算定の考え方が示されています。

食事介助は身体介護、調理・配膳・片付け・買い物は生活援助として位置づけられます。

– 訪問介護における生活援助の範囲等に関する厚生労働省通知・Q&A
– 本人以外の家族分の家事(調理含む)は原則算定対象外、作り置きは必要性・安全性・計画位置づけを前提に限定的、同居家族が家事可能な場合は生活援助が制限される、といった運用が示されています。

– 医療的ケア(経管栄養・喀痰吸引)に関する制度
– 「介護職員等による喀痰吸引等及び経管栄養の実施のための研修制度」により、所定の研修修了者のみが一定の医療的ケアを実施可能。

多くの経管栄養は訪問看護が担います。

ヘルパーが一般的な訪問で実施する食事介助は経口摂取に限られます。

– 関連専門職との連携
– 管理栄養士の居宅療養管理指導(介護保険)や医療保険の訪問栄養食事指導、言語聴覚士の嚥下リハ、訪問看護の健康管理等と連携し、訪問介護はその計画・指示に沿って日常の実践を担うという役割分担が制度上想定されています。

よくある誤解の整理

– ヘルパーの裁量で糖尿病食や嚥下食の段階を変更することは不可。

変更は医師・管理栄養士・ST等の評価に基づき、ケアプラン・訪問介護計画に反映させます。

– 誤嚥が疑われる場合に無理に「水で流し込む」ことは危険。

中止と姿勢調整、状況観察、必要な連絡が原則。

– 「ついでに家族の分も」や「大掃除・特殊清掃とセットで」などは介護保険の対象外。

必要なら自費サービスで事前合意を。

まとめ
– 訪問介護の食事支援は、生活援助(調理・買い物・片付け等)と身体介護(摂食・嚥下の介助等)で構成され、ケアプランと訪問介護計画に基づいて、必要性・安全性・自立支援の観点から実施されます。

本人以外の家族分の調理や過度な作り置き、医療的ケアに該当する行為は介護保険の範囲外です。

嚥下障害や疾患に伴う食事制限がある場合は、医師・管理栄養士・言語聴覚士・訪問看護との連携が鍵となります。

具体の内容や範囲は自治体通知・事業所規程により異なり得るため、担当ケアマネジャーとサービス提供責任者に希望と事情を詳しく伝え、計画に明記してもらうのが最も確実です。

参考となる公的根拠(検索の目安)
– 介護保険法
– 厚生労働省「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(訪問介護)
– 厚生労働省「介護報酬告示・通知(訪問介護の身体介護・生活援助の定義と算定要件)」
– 厚生労働省「訪問介護における生活援助の範囲等に関するQ&A」
– 厚生労働省「介護職員等による喀痰吸引等研修・経管栄養に関する制度」
– 介護保険の「居宅療養管理指導(管理栄養士)」および医療保険の「訪問栄養食事指導」に関する資料

不明点や個別事情があれば、利用予定の事業所のサービス提供責任者、担当ケアマネジャーに、食形態・アレルギー・摂食時の留意点・作り置きの希望などを具体的に伝え、計画に落とし込んでもらってください。

これにより、制度の範囲内で最大限、安全で満足度の高い食事支援が実現しやすくなります。

入浴・清拭・整容など清潔保持のサポートは具体的にどう行われる?

以下は、訪問介護で提供できる「入浴・清拭・整容」など清潔保持の支援について、実際の進め方、注意点、できる範囲・できない範囲、そして根拠(制度・基準・ガイドライン等)をまとめたものです。

実務での流れに沿って具体的に記します。

前提と基本姿勢

– 清潔保持の目的 身体の清潔を保ち、皮膚トラブルや感染を防ぐ、誤嚥性肺炎などのリスクを下げる、QOL(快適感・自己尊重)を高めること。

– 実施の前提 ケアマネジャーの居宅サービス計画(ケアプラン)に基づき、訪問介護事業所のサービス提供責任者が作成した訪問介護計画書・手順に沿って、利用者の同意のもとで行います。

– 基本原則 プライバシー配慮(露出最小化・カーテンやタオルで覆う)、自立支援(できる部分を本人にしてもらい、できない部分を補う)、安全第一(転倒・ヒートショック・低血圧・やけど・誤嚥の予防)、清潔な部位から不潔な部位へ、観察と記録(皮膚・口腔・爪・髭剃り後などの状態)、感染対策(手指衛生・手袋・用具の衛生)。

入浴介助(浴槽浴・シャワー浴・部分浴)
実施手順の例

– 事前確認
– 体調(発熱・咳・息切れ・めまい・食事摂取状況)、バイタル(可能な範囲で血圧・脈・SpO2)、服薬状況、創傷・カテーテル・ストマの有無を確認。

– 冬季は脱衣所・浴室の室温を整える(目安24℃前後)。

湯温は一般に40℃未満(39~40℃)。

入浴時間は10~15分を目安に個別調整。

– 環境整備と福祉用具
– 浴室の滑り止めマット、手すり、シャワーチェア、浴槽台、バスボード等を適切に配置。

動線から障害物を除去。

– 転倒リスクが高い場合は二人体制や見守り強化を検討(ケア計画に沿う)。

– 脱衣・移動
– 衣類は脱ぐ時は健側から、着る時は患側からを基本。

低血圧・ふらつきに注意し、段階的に体動。

– 洗身・洗髪
– 原則、清潔な部位から不潔な部位へ。

顔→上肢→胸腹→背中→下肢→足→陰部・臀部の順。

陰洗は一方向で拭き、部位ごとにタオルを変える。

– 皮膚の脆弱性(スキンテア)に配慮し、ゴシゴシ擦らず泡で包んで流す。

保湿は入浴後に。

– 入浴中の観察
– 顔色・脈・呼吸・会話の反応、めまい・寒気・息切れなど。

異常時は即時中止し保温・補水・座位休息、必要に応じて家族・ケアマネ・看護等へ連絡。

– 退出・保清後のケア
– 水分補給、保温(タオル・衣類)、保湿剤の塗布、褥瘡好発部位の観察と体位変換、創部や医療デバイス部位は医療職の指示に従い無理に触れない。

– 記録と共有
– 実施内容・皮膚所見(発赤・発疹・乾燥・搔破痕・褥瘡兆候)・体調変化・事故ヒヤリ等を記録し、必要時は連絡・報告・相談。

入浴回避や代替
– 禁忌・注意 発熱、血圧の極端な高低、強い倦怠感、重い呼吸苦、出血傾向、医療者が入浴不可とした状態などは入浴中止。

代わりに清拭や部分浴(足浴・手浴・陰部洗浄)を行う。

– ヒートショック対策 脱衣所と浴室の温度差を小さくする、就寝前や飲酒直後の入浴を避ける、肩まで長湯しないなどを徹底。

– デバイス対応 在宅酸素は入浴時は火気厳禁・機器の扱いは計画・医療職の指示に従う。

胃ろう・ストマ・留置カテーテルなどは基本的に医療職の管理領域であり、訪問介護は無理な操作を行わない。

清拭(入浴が難しい時の全身・部分清拭)
実施手順の例

– 準備
– 蒸しタオルや使い捨て清拭クロス、ぬるま湯、弱刺激性の洗浄料(リンス不要のノンリンス製品も可)、バリアクリーム・保湿剤、手袋。

– 手順
– 覆いを活用し露出最小化。

清潔から不潔へ、顔→頸→上肢→胸腹→背中→臀部→陰部→下肢→足の順。

一部位ごとにタオル面を替え、陰部・肛門は必ず別の清潔タオルで前から後ろへ一方向拭き。

– 皮膚を擦りすぎない。

皺・皮膚弛緩部(腋窩・鼠径・乳房下・指趾間)は念入りに乾燥予防。

爪周囲の汚れは優しく除去。

– 体位変換は声かけしながら、摩擦・ずれを最小に(スライディングシート等があれば活用)。

– 仕上げ
– 十分な乾燥と保湿。

おむつやパッドは清潔なものに交換。

発赤・浸軟・びらんの観察と記録。

整容(洗顔・口腔ケア・整髪・髭剃り・爪のケア・身だしなみ)

– 洗顔・保湿
– ぬるま湯・低刺激洗顔料で優しく。

拭き取りは押さえるように。

乾燥部に保湿剤。

– 口腔ケア
– 義歯は取り外して洗浄、口腔内は歯ブラシ・スポンジブラシで歯・歯間・頬粘膜・舌苔を清掃。

むせのある方は座位・前傾で少量ずつ、吸引が必要な場合は訪問看護等へ連携。

うがいが困難なら湿潤綿棒で拭き取り。

– 実施後は口唇の保湿。

口臭・出血・痛み・義歯不適合などは記録・共有。

– 整髪・髭剃り
– 髪はブラッシング、絡まりは毛先から。

洗髪はシャワーや洗髪台もしくはドライシャンプー等で。

髭剃りは原則電気シェーバーを使用し出血リスクを低減。

湿疹・出血・皮膚病変がある部位は避ける。

– 爪のケア
– 爪切りは医行為ではないが、深爪・出血リスクに十分配慮。

糖尿病・抗凝固薬内服・血流障害がある場合や足爪の肥厚・巻き爪は無理をせず医療・フットケア専門職へ相談。

爪やすり中心で整える方法が安全。

– 服薬前後の配慮
– 口腔ケアは食前・食後のタイミングを個別に調整(嚥下機能に合わせる)。

義歯の装着状態を確認。

訪問介護で「できること/できないこと」の目安

– できること(介護保険上の身体介護に該当)
– 入浴介助(浴槽・シャワー・部分浴)、清拭、洗髪、陰部洗浄、口腔ケア(一般的清掃)、整髪、髭剃り(電気シェーバー)、衣類の着脱介助、爪のケア(安全に配慮した範囲で)。

– 生活援助に該当するもの(必要に応じて計画に位置づけ)
– 身だしなみに関わる日常的な整容補助(化粧・整髪の手伝い等)。

ただし「日常生活に支障を来す範囲」を超える過度の美容的行為は介保では算定困難で、自費になる場合あり。

– できないこと(医行為等)
– 創傷の処置、ストマ装具の交換、カテーテル管理、吸引、点滴・胃ろう注入などは原則訪問看護の領域。

皮膚病変への医薬品塗布も医師・看護師の指示を要する場合があるため、事業所手順に従い連携する。

安全と衛生の要点

– 感染対策 手洗い・手指消毒、使い捨て手袋、タオルの部位使い分け、器具の消毒・乾燥、リネンの衛生的取り扱い。

– 転倒・転落予防 足元の整備、濡れた床の拭き取り、適切な福祉用具、高さ調整、見守り。

– 皮膚保護 摩擦・ずれを避け、保湿・バリアクリーム活用、失禁時は速やかに洗浄・乾燥。

褥瘡リスク部位(仙骨・踵・坐骨・大転子など)の観察と体位変換。

– 体調急変 めまい・顔面蒼白・冷汗・息切れ・胸痛・血圧異常などを認めたら直ちに中止、保温・安静・連絡。

根拠(制度・基準・ガイドライン等)

– 法制度・運営基準
– 介護保険法および「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(厚生労働省令)により、訪問介護の人員配置、運営、個人情報・記録、苦情対応、衛生管理等が定められています。

– 厚生労働省の「訪問介護における生活援助・身体介護の範囲に関する解釈通知・Q&A」に、清拭・入浴・陰洗・口腔ケア・整容等が身体介護として位置づけられる旨や、生活援助との線引きが示されています。

– 介護給付費(報酬)の算定要件(介護給付費単位数表・解釈通知)に、入浴介助・清拭・洗髪・口腔ケア・排泄介助等の具体的行為が身体介護として明記されています。

– 感染対策・安全
– 厚生労働省や自治体が公表する「介護現場における感染対策の手引き・マニュアル」に、手指衛生、個人防護具、環境整備、リネン管理、嘔吐物処理等の標準予防策が示されています。

– 冬季の入浴事故(ヒートショック)については、消費者庁・国民生活センター・厚生労働省の注意喚起で、浴室・脱衣所の保温、湯温・入浴時間、見守りの重要性が周知されています。

– 口腔ケアの有効性
– 高齢者の口腔ケアが誤嚥性肺炎の発症リスク低下や摂食嚥下機能の維持に寄与することは、歯科・老年医学領域のガイドラインや研究で繰り返し示されています(歯周病菌の管理、舌苔除去、適切な義歯管理等)。

– 皮膚ケア・褥瘡予防
– 日本褥瘡学会等の推奨で、皮膚の清潔・乾燥の回避・保湿、圧の分散、摩擦・ずれの抑制が褥瘡予防の基本とされ、清拭・入浴時の皮膚観察とスキンケアの重要性が示されています。

– 実施枠組み
– 訪問介護は、ケアマネの居宅サービス計画を踏まえ、事業所のサービス提供責任者が訪問介護計画書・手順書を作成し、ヘルパーがこれに基づき実施・記録・報告することが省令・通知で求められています。

現場での工夫と自立支援の視点

– 本人のこだわり・生活歴に沿う(湯温・入浴時間・整髪の好み・化粧の有無など)。

本人の選択肢を提示して自己決定を尊重。

– 動作の分解と段階付け(洗身・洗顔・歯磨きなど、できる部分は自分で、難しい部分のみ介助)。

– 口腔ケアや整容を食事・外出・交流と結びつけ、意欲と社会参加を引き出す。

– 福祉用具・住環境整備(手すり・滑り止め・浴室暖房・昇降台)を活用し、介助量の軽減と安全性向上を図る(必要に応じて福祉用具専門相談員・PT/OTと連携)。

連携と記録

– 異常の早期発見 皮膚の変色・腫脹・疼痛、口腔内の出血・潰瘍、義歯不適合、めまい・息切れなどを記録し、家族・ケアマネ・訪問看護・歯科等と速やかに共有。

– 事故防止 ヒヤリハットの振り返り、手順の見直し、用具の改善提案。

– 倫理・法令遵守 プライバシー保護、同性介助の配慮(可能な範囲で)、写真記録の扱いは同意と事業所ルールに従う。

まとめ
– 訪問介護の清潔保持は、入浴・清拭・整容を軸に、安全・衛生・自立支援・尊厳の4本柱で実施します。

具体的手順は「清潔から不潔へ」「露出最小」「観察と記録」「事故予防」を徹底し、本人の好みや体調に合わせて調整します。

– これらが介護保険の身体介護として提供できる根拠は、介護保険法に基づく運営基準、厚生労働省の解釈通知・Q&A(身体介護と生活援助の範囲)、介護給付費の算定要件に示されています。

感染対策や入浴安全、口腔ケア・褥瘡予防の有効性は、厚労省や関連学会・自治体の手引き・ガイドラインで裏付けられています。

– 個別の疾患や医療デバイスがある場合は、訪問看護や歯科、主治医と役割分担を明確にし、訪問介護では許容される範囲の清潔保持を安全に実践することが重要です。

必要であれば、具体的な計画書例やチェックリスト(入浴前の状態確認票、清拭手順書、口腔ケア観察表など)のサンプルもご案内できます。

【要約】
訪問介護の食事支援は、生活援助(買い物・調理・配膳・片付け等)と身体介護(姿勢調整・摂食嚥下介助・食形態調整・口腔ケア等)の組合せ。一回の訪問で準備~介助~後片付けまで可。衛生管理やとろみ・刻みに対応し、記録・情報共有も行う。家族分調理や大量作り置きは不可。医療的ケア(経管栄養注入や嚥下評価等)は原則対象外。